『国循サザン事件』第5回公判を終えて

2016/6/28,私の事件の第5回公判が行われました。

平日日中に行われる裁判であるにも関わらず,傍聴に来て下さった方には心より感謝申し上げます。

第5回公判では,前回に引き続き,検察側証人・西田浩二氏(事件当時,国循の調達企画専門職)に対する弁護側の反対尋問が行われました。

尋問の様子は,当ブログでNさんが書いて下さっております。私からは,軽くコメントいたします(桑田)。

 第5回公判の最後では,検察側証人・西田氏に対する再主尋問が行われました。再主尋問とは,もう一度検察側が証人に尋問を行うことです。検察官は,弁護側の反対尋問で明らかになった,数々の「検察にとって都合の悪い事実」の印象を薄めようと必死の様子でした。

それは,あたかも検察官が「証人の弁護人」であるかのような様相で,

  • 意見招請はそれほど重要な手続きでない。だから行わなかったとしても大したことはない。
  • 業者からもらった仕様書には変更が加えられていて,仕様書の作成を丸投げしたわけではない
  • 特定の業者に有利な内容ではない
  • 落札業者から個人的な便宜を図ってもらったことはない
  • 業者から仕様書作成にあたり技術支援を受けることは問題ではない
  • 業者からの技術支援は「業者の直接関与」ではない

などという釈明を証人に行わせようとしたものでした。

念のためもう一度言いますが,これは証人尋問であって,被告人質問ではありません。被告人の弁護人が,刑事事件で起訴された被告人に対して,無罪を主張する,あるいは,その罪を少しでも軽くしたいがために,こういう類の問いかけするのなら話はわかります。

しかし,これは,証人に対する検察の尋問なのです。検察が,自分たちが見つけられなかった(あるいは隠していた)「証人の不適切な行為」に関する動かぬ証拠を公判で弁護側から突きつけられ,これによって証言の信憑性が貶められたと知り,あわてふためいて「あれは不適切な行為ではなかった」と証人を弁護しているのです。

・・・なにかの喜劇ですか。

滑稽だったできごとを3つ紹介します。

1つめは,

(検察官)あなたが,◎◎はがき(個人的に利用するもの)のデザインを頼んだプレンティ社(直前の入札の落札業者)には,その対価をタダにしてもらったり,大幅にまけてもらったりしたことはないですね?

(証人)ありません。

のやりとりでした。これは,完全に誘導尋問*1ですし,検察がそう答えてほしいというのが見え見えの質問ですよね(笑)。

この検事,大丈夫でしょうか。金払ったからいいってもんでもないでしょう。調達の責任者が,入札(プレゼン)で落札した業者,しかも,その調達責任者自身がプレゼンの評価委員まで務めたような状況で,その入札の直後に,自分のきわめて個人的な案内はがきのデザインを頼んでるんですよ。そんなもの頼んだ時点で不適切でしょう。「大幅にまけてもらったりしたことはない」って,じゃあ,ちょっとはまけてもらったってことですか? あなた,そこまでして証人を守って,私を有罪にするための証言をさせたいんですか?

2つめ。

弁護側の反対尋問のときには,「わからない」「知らない」「自分の判断することではない」「部下がやった」「現場に任せていた」という証言を繰り返し,のらりくらりと証言していた証人が,検察側の再主尋問に移るやいなや,ハキハキと答えること答えること! 検察官も手元の紙を見ながら次々に質問することすること!

証人の「釈明」はとてもテキパキとスムーズに行われていました(笑)。

まるで陸の上にいるよちよち歩きのペンギンが,海に潜り俊敏に泳ぎ回っているかのようでしたよ。

必死に台本を用意して覚え込んできたんでしょう。涙ぐましい。そして,恥ずかしい。

最後に,3つめ。

(検察官)総合評価落札方式を取らなかったことについて,契約審査委員会から指摘を受けましたか?

(証人)受けていません。

そりゃそうでしょう。契約審査委員会には報告していなんですから。気付きようがありません。そのことは,反対尋問で高見弁護士が証人に確認していましたよ。聞いてなかったんですか。

 

いくら釈明しようとも,調達責任者が不適切な行為を行ったことには変わりありません。証人をかばえばかばうほど,私には有利に働きます。

西田氏は,「技術支援」と「直接関与」を,自分の行いにあわせて区別しよう(技術支援→許される行為→自分のしたこと,直接関与→やってはダメなこと)とするあまり,証言が二転三転し,支離滅裂でした。あまりの無茶苦茶な説明に混乱した裁判長が,『あなたの認識で「技術支援」と「直接関与」はどう違うのですか』と改めて補充尋問したほどです。(桑田)

*1:主尋問,再主尋問では,誘導尋問が原則禁止されています(刑事訴訟規則199条の3第3項,199条の7第2項)。誘導尋問とは,質問者の意図どおりに証人に答えさせようとする尋問のことで,「はい」「いいえ」で証人に答えさせる問いかけ(クローズド・クエスチョン)がその一例です。