本日、控訴趣意書を提出いたしました

みなさま、大変ご無沙汰しております、桑田です。

第一審の衝撃の判決からはや5ヶ月、その間、私は極端に忙しくなった仕事をこなしたり、また体調を崩したりしながらも、本日の控訴趣意書提出期限に向けて着々と準備を進めておりました。途中経過の報告が滞っており、大変ご心配くださった方々もいらっしゃるかと思います。大変申し訳ございませんでした。

ここで皆様に、3つのご報告がございます。

1.弁護体制の変更

控訴審から、新たに郷原信郎弁護士、新倉栄子弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所*1)に弁護人として加わっていただくことになりました。これで私の弁護団は、第一審からの高見秀一弁護士、我妻路人弁護士と合わせて4名の体制となります。

今回、郷原氏に加わっていただいたのは、彼が検事であった時代に法務省法務総合研究所において入札談合をテーマとして研究に従事し、そして退官後も官公庁の公正入札調査会議で委員を務めるなど、まさに「談合関連事件の第一人者」であるからです。実は公共調達分野における法律の専門家は非常に数少なく、その専門家であり弁護士でもあるのは、おそらく日本では郷原氏以外には存在しないと思われます。

郷原氏はメディアへの露出も多く、ご自身もブログ*2等で積極的な情報発信をしておられることから、私も彼の名前だけはよく存じ上げている(八田隆氏の国賠事件の弁護人でもあります)という状況でしたが、彼が入札事件の数少ない専門家であるとは知らず、私が弁護をお願いするなど考えにも及びませんでした。しかし、今回、国循サザン事件を取材してくださったジャーナリストの方から《まさに、適任》ということで郷原氏をご紹介をいただき、最終的に弁護をお願いできることになったのは、非常に幸運な巡り合わせであったと思います。

2.控訴審の方針

控訴審では第一審と異なる視点をもって戦わなくてはなりません。

郷原弁護士との打ち合わせで、まず指摘されたのは、第一の公訴事実について、かりに私が「現行体制表」を送ったのだとしても、それは「公正を害すべき行為」として犯罪に当たりうる、とのことでした。

ご存じのとおり、私がダンテック高橋氏に送ったのは入札資料と同じ「次年度の体制表」でしたが、それは私が「現行体制表」だとの認識のもと誤って送ってしまったものだ、というのが第一審での主張でした。しかし、郷原氏の指摘は、そもそも私の認識どおりであったとしても罪になりうる、あとはその罪がどの程度重いのかという問題にすぎない、というものでした。

となると、この事件の戦い方に大きな変更が必要になりました。私の当時の認識(記憶)はこれまでどおり変わりないとしても、はたして本当に「現行体制表」であることを十分確認したのかどうか、もしかすると次年度のものを「現行のもの」と思い込んでしまったにすぎないのか、などについて、私は改めて考えてみる必要に迫られました。

本稿では詳しく述べませんが、結論として、第一の公訴事実については積極的に無罪を争わないことにしました。ただし、官製談合防止法の趣旨や過去の類似事件における刑罰の状況を踏まえて、罪の程度は非常に軽いという主張をします。第二・第三については、従来通り、裁判所の法令適用の誤りと事実誤認を徹底的に訴え、無罪主張します。

事実上、実質的な争いができるのはこの控訴審まで、という事情を考慮すると、勝ち目のない「行き過ぎた主張」をするよりも、「至極まっとうな主張」を展開することによって、第二・第三の公訴事実についての第一審の「とんでもない認定」を正すことの方が重要であろうと思います。第二・第三の公訴事実が、今後の公共調達、とくに医療情報システムの入札のあり方に与える影響の大きさを考えると、この選択による社会的意義はきわめて大きいと考えています。

これまで私の「完全無罪」を信じて応援してきてくださった方々には非常に心苦しい思いがあります。しかし、上記のような事情をご理解いただき、引き続きご支援をいただけましたらうれしく思います。

3.控訴趣意書の提出

ということで、上記のような方針で控訴趣意書をまとめ、本日、大阪高等裁判所第一刑事部に提出をいたしました。郷原弁護士を中心とする4人の弁護士の先生方に大変なご苦労をいただいた成果は、およそ100ページにも及ぶ大部の趣意書となりました。

また、趣意書をまとめるにあたり、三人の有識者の先生方にご意見をいただきました。

  • 官製談合防止法の趣旨や公共調達のあり方、罰則の考え方については、上智大学の楠繁樹教授
  • 病院情報システムの仕様書記載の考え方については、大阪大学の松村泰志教授
  • 仮想化システムを含む情報ネットワークの考え方については、京都大学の黒田知宏教授

から、それぞれ貴重なご意見を賜りました。

各先生のご意見は、主張の骨子として、また重要な論点の補強として、趣意書の隅々に至り反映させていただきました。

皆様、本当にありがとうございました。

控訴趣意書の内容については、おって、弁護士と相談しながらお知らせしていくことにいたします。勝手ばかり申し上げますが、引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

今後とも、なにとぞよろしくお願いいたします。

2018年8月13日

桑田 成規