第29回公判傍聴録 反対質問2回目その1

国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。

2017年7月26日13時30分〜17時00分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第29回公判が行われました。

この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第28回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。

※第11回より更新が滞っており、ご迷惑をおかけいたしております。順次遡りましてアップしてまいりますので、今しばらくお待ちください。

※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter

第29回公判の様子

  • 裁判官 西野吾一裁判長他2人
  • 桑田さんの弁護士 2人
  • 高橋さんの弁護士 3人
  • 検察官 2人
  • 報道関係 2人
  • 傍聴者 約13人

またしても裁判官の交代で弁論更新

2016年4月の公判開始から1年3ヶ月。そして、前回5月の弁論更新からわずか2ヶ月で、またしても裁判官の交代に伴う弁論更新が行われました。

前回の弁論更新の様子は

第26回公判 弁論更新(1)

第26回公判 弁論更新(2)

今回は桑田さん弁護団の高見弁護士からは意見陳述はありませんでした。

高橋さん弁護団の秋田弁護士からは、約10分間の意見陳述がありました。

秋田弁護士は冒頭、

現在の日本の司法制度上やむをえないことではあるけれども、わずか2ヶ月の間にこのように再度意見を述べなければならないことは、非常に残念である

と、やんわりではありますが「おかしいでしょう」ということを、はっきりと伝えられました。

というのも、新しい裁判官が入ってきた瞬間に、続けて傍聴している人たちからも「また裁判官変わったのか?」という空気が伝わりました。これまでの1年3ヶ月で、最初から居る裁判官は裁判長のみ。

昨年度の間にも3人の交代がありました。もちろん、年度変わりの異動の際には仕方がないなと思いましたが、今回の件を含めると交代の頻度が高すぎると思わざるをえません。

交代が多いことで何が困るのか?

今回事件とされているのは、我が国トップクラスの医療機関であるナショナルセンターのITに関する重要な入札に関係した内容です。

前回の反対質問で検察は「ダンテックとの契約をなぜ随意契約にしなかったのか」にこだわり、何度もこのことについて質問を繰り返しましたが、秋田弁護士は「検察は見立てを誤っている」として、

どのような契約にするのか(入札にするのか、随意契約にするのか)ということや、システムスクエアとの交渉を不調に終わらせたことについては、桑田さんが決めたことではない。全て国循の契約係がきめたことである。

と再度説明し、仕様書の内容についても

仮に仕様書に記載された要求水準が高かったとしても、なんら公平さを害するものではない。むしろ、ナショナルセンターとして当然のことであり、十分な事前調査を行わないまま入札に参加し、異常に安い入札金額を提示したシステムスクエアに問題がある。

と意見を述べられました。

事件とされている入札が行われたのは2012年、2013年であり、現在、逮捕起訴された2014年からみても2年半以上経過しています。

その当時の記憶を思い起こすにも厳しい状況の中、非常に複雑なこの件に関しては、質問をしてくる検察官に対して我々が「本当にわかってますか?」と尋ねたくなることもしばしばあります。

もちろん裁判官は、これまでの資料も全て目を通されたでしょうし、ITに関する勉強もしておられるでしょう。しかし、実際の公判での証言の間の取り方や、証人の感情の揺れまで書面では伝わりきらないと思われるため、あまりに短期間で裁判官が交代してしまうことは、支援者としても不安を覚えてしまう出来事でした。

すり替えられる内容

第2回目の反対質問は公訴事実2*1についての質問から始まりました。

H25年度一般入札の結果、システムスクエアが第1交渉権を獲得、ダンテックは第2交渉権者となりました。

検察は、入札終了後に桑田さんが第1交渉権者であるシステムスクエアに向けて作成した「確認書」のことについて細かく質問しました。

この確認書は、システムスクエアに対して「引き継ぎ業務を早めに行ってほしいこと」や「2月、3月になると現場は忙しく、十分な打ち合わせの時間が取れないこと」などを伝えるための事項と、システムスクエアの履行能力を詳細に確認するための事項の2つから構成されていました。

検察からは

公平の観点からすれば、2月〜3月には十分な打ち合わせの時間が取れないなどという国循側の事情は、入札前の時点で、入札参加者にもあらかじめ伝えておくべきではなかったのか?

との質問がありました。桑田さんの答えは

この時、システムスクエアに向けて作成した確認書の内容は極めて当然のことであり、本来ならわざわざ書面を作成して先方に確認するよう内容ではありません。しかし、あまりにもシステムスクエアさんがわかっていない(利用者管理システムを独自開発するかもしれないと言いながらまったくヒアリングに来ない、後でまとめて打ち合わせをするなどと発言があった)ようでしたので作成したものです。

要するに、システムスクエアに対しては「送らざるをえなかった」だけであり、本来なら事前にも事後にも送る必要のない、当然のことであったということです。

この答えの際にも

私たち現場のものにとって最も大切なことは、年度変わりの4月1日に滞りなくシステムが動くということなのです。

と強調し、あくまでも

契約がどうであったか

その勝ち負けがどうであったか

ということが問題なのではなく、

どの業者が落札したにしても「システムが止まることがあってはいけない」ことこそが重要であり、自分の仕事であったのだ

と訴えました。

先ほどの確認書の内容について、もともと教えておくべきだったのではないか?という検察の質問は

ダンテック以外の業者の参入が困難となるような条件を盛り込んだ仕様書を作成し,その事情を隠して入札に供した

という、公訴事実の「見立て」を正当化するためのものだと思われますが、ダンテックの開発した利用者管理システムの保守に関しては、最初からダンテックと保守契約を結ぶのか?もしくは独自開発するのか?とシステムスクエアに尋ねていたわけで、独自開発しないといけないかもしれないよ?ということを隠していたわけではありません。

しかも、保守対象となっている利用者管理ステムについて、(本来なら当然その開発元に保守依頼をするべきところを)システムスクエアが「独自開発することも想定している」と国循に明言しているにも関わらず、彼らは現場には一切ヒアリング(入札参加業者として十分な情報収集を行っていない)に来ないとう状況から、桑田さんは現場の責任者として「本当に4月から大丈夫か?」と不安の思いから、システムスクエアに対して「本当にやるつもりなのか?」と確認を行っただけにすぎないことは想像に難くありません。

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システムスクエアに対して確認書が必要だった理由

そもそもH25年度入札は、NECが入札に参加する予定だったところ、国循の提示した「再委託率は50%以下でなければならない」という条件をクリアできないと判断したNECが参加を断念し、NECから代わりとして参加を促されたシステムスクエアが、〆切間際になって入札に参加することになったという経緯があります(NEC営業の尾崎氏の証言より)。

NECに代わり入札に参加することになったシステムスクエアは、仕様書に書かれていた

500床以上の病院での仮想化の実績があること

という条件に対し、システムスクエアの実績ではなく、NECの実績を提出していたことが明らかになっています。当時のシステムスクエアの営業担当者であた鶴見氏が、同社社長の喜来氏に実績を確認し、喜来社長はNECに500床以上の仮想化実績を尋ね、その答えを鶴見氏がまとめて国循に提出したことが、これまでの公判で証言されています。

国循からはシステムスクエアの仮想化実績を問われているのに、なぜNECに問い合わせたのか?という点については、

鶴見氏(システムスクエア担当者)

当時のシステムスクエアは、NECが受注した案件の業務支援として、現場に当社の技術者が入っていることが多かった。なのでNECの案件で500床以上の仮想化を行う現場を経験していれば、当社もそこに入っているだろうと考え、そういう技術を持った技術者が当社にもいるということになると思った。

これが詭弁であることは明らかです。たしかにNECの受注した病院情報システムの案件の一部を下請けとしてシステムスクエアが引き受けていたことがあったとしても、多岐にわたる大規模システムのどの部分を担当したかは分かりません。本当に仮想化部分を担当したかどうかをまったくNECに尋ねることなく、NECの実績をそのままシステムスクエアの実績として国循に資料を提出していたのです。そもそも、社長は、自社の技術者に聞けば、実績があるかどうかぐらいすぐにわかるはずです。「君、仮想化を担当したことあるか」と。なぜ内部でそれを聞かなかったのか。実際には実績がなかったからとしか考えられません。

また、この時NECの実績を聞いた喜来社長が自社のものとしてカウントした実績(本来はNECの実績)の一つは「北里メディカルセンター」でしたが、同センターは実際には372床しかなく500床以上の条件に満たないため、地理的にまったく離れた、システムも異なる北里大学病院の1,033床をプラスし、「北里大学病院グループなら条件を満たす」と詐称して書類を提出したことも、証言で明らかになりました。

このように、当時のシステムスクエアの入札に臨むいい加減な態度は、システムスクエアの営業担当であった鶴見氏が検察側証人として証言された際に露呈しています。

ですから、今回検察からの質問に桑田さんが答えた内容や、当時国循が確認書をシステムスクエアにわざわざ送らざるをえなかった経緯も当然のことではないでしょうか。

それでいて、検察は、「なぜ」「当時はそう考えなかったか」と、何度も同じ質問を繰り返し、あたかも桑田さんが矛盾した行動をとっていたかのような印象操作ばかりを行っていたことに対し、答えていた桑田さんもいらだちを隠せないようでした。もちろん傍聴席でも同じ気持ちでした。

これまでの公判に全て参加していた者にとって、検察の描いているストーリーが崩壊していることは明確ですが、この期に及んで、検察は巧妙に部分部分を切り取って質問していました。このことは、これまでその場にいなかった人たちに疑問を抱かせたり、混乱させるのではないかと思います。ですから、冒頭に書いたように裁判官が何度も交代することには戸惑いも不安もあるのです。

もちろん裁判官は、裁判のど素人である私のような傍聴人ではなく、専門に勉強を重ねたプロですから、これまでの速記録や資料を見れば正しい判断が行えるものと信じます。しかし、文字だけでは、検察側証人のうろたえた姿や、興奮した様子まで伝えることは難しいのではないかと考えると、重ね重ね裁判官の交代は残念でなりません。

第29回公判も13時半〜17時まで、長時間にわたって行われましたので、後半は後日アップいたします。

次回は9月4日(月)13時30分から大阪地裁にて第30回公判が行われます。

どうぞ一人でも多くの方に関心を持っていただき、歪められた司法の力に立ち向かう桑田さんを一緒に応援していただけないでしょうか。

傍聴に来ていただけることはもちろんですが、ブログへのコメント、Facebookページへのコメントやメッセージも、非常に励まされます。

 

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ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。

 

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*1:2013年度の一般競争入札において,ダンテックのみを仕様書案の作成に関与させるとともに,ダンテック以外の業者の参入が困難となるような条件を盛り込んだ仕様書を作成し,その事情を隠して入札に供した