国循サザン事件【おさらい】

1.主な争点

①H24年の情報システム運用保守の「一般競争入札」(A社・B社が参加、B社が落札)において、被告人がB社に提供したA社(当時の現行業者)の運用体制図が入札の公正を害したか。

②H25年の情報システム運用保守の「一般競争入札」(B社・C社・D社が参加、C社が落札するも契約せず)において、被告人が作成に関与した仕様書の要件※がB社(当時の現行業者)以外を排除する目的で作成されたものである(これにより入札の公正を害した)か。

※500床以上の複数の医療機関における仮想化技術を用いた病院情報システムの構築経験を有する技術者を複数配置すること

③H25年の情報システム運用保守の「公募型企画競争」(B社・E社が参加、B社が落札)において、被告人が「競争を装うため」落札意思のないE社を参加させる一方で、B社にはプレゼン資料の作成指導を行い、もってB社(当時の現行業者)を落札に至らしめることにより入札の公正を害したか。

2.検察のストーリー

検察は、被告人と、同じく起訴されたB社社長が親密な関係にあり、B社かわいさあまりに、①当時の現行業者であったA社を打ち負かすべくB社に情報(A社の体制図)を漏洩し、②次年度、B社が現行業者になると、B社以外を排除するような仕様書を作り、③入札のプレゼンでB社が負けないようにB社に指導を行った、という見立てです。

3.私(被告人)の主張

①について。被告人が「A社の体制図をB社に提供した」事実に争いはありません。被告人は、現行業者であるA社の業務体制は、入札の公平性を保つために「入札参加業者に遍く知らせるべき」と考えて提供したものであると、主張しています。

②について。被告人は、仕様書の要件は一定水準以上の業者を選定するために必要、かつ先端医療に携わる国循(612床の特定機能病院)にとって合理的なものであったと、主張しています。

◎そもそも本入札は、WTO国際協定のルールに従えば当然に「意見招請」という手続きが行われるはずでした。しかし、国循の事務方がこの手続きを「ありえないミス」により省略してしまいました(ミスをチェックするはずの契約審査委員会や契約監視委員会も機能していなかった)。意見招請とは、仕様書「案」を公開し、多数の企業の意見を聞き、仕様書を修正する機会を設ける手続きです。これが実施されなかったことこそが「入札の公正性を阻害する最大の要因である」にもかかわらず、手続きの瑕疵の責任を、事務方ではない「現場の責任者」である被告人個人に負わせるばかりか、国循の組織的な欠陥を放置し庇おうとする検察側の姿勢に疑問を感じずにはいられません。

③について。被告人は、本入札に関してE社と接点がなく、E社に入札への参加を依頼した事実もありません。そもそも被告人には、落札意思のない企業を無理に参加させるメリットもありません。むしろ、国循の事務方は、入札が一者応札となると事後の事務手続きが煩雑になるためどうしても避けたかったという動機があります。また、被告人がB社にプレゼン資料の指導をした事実もありません。

◎かりに被告人がB社に便宜を図るとしたら、わざわざE社を競争相手に仕立てる理由がありません。E社が参加しなければB社だけが入札に参加するわけですから、B社の落札はほぼ「確実」です。被告人が、「E社を無理に入札に参加させ」かつ「B社がE社に負けないように資料作成の指導をする」などという手の込んだ芝居をする理由など、まったくないのは明らかです。(桑田)

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