『国循サザン事件』第4回公判を終えて(3)

元国循調達室企画専門職の西田氏が検察側証人として出廷した第4回公判から、今回は,前回に引き続き,

第4回公判記事で紹介された弁護側尋問の要点

で示した弁護側反対尋問の要点の3~5について,西田氏の証言を踏まえて概説します(桑田)。

この記事は,マスコミでは報道されない公判の様子をお伝えすることによって,より多くの方にこの『冤罪事件』の真実を知ってもらうことを目的として書いているものです。私自身が公判の法廷の場で見聞きしたことを元に,自らの認識と意見のみを書いておりますので,記載内容には一定のバイアスがあること,そして私の弁護人の見解や弁護団の弁護方針とは無関係であることをご承知おきください。

 3.本事件以外の過去の入札において西田氏自身が評価委員を務めた公募型企画競争の落札業者に対し,当該入札の直後,西田氏は,個人利用目的の案内ハガキのデザインを依頼し,それらを受け取っていたことの経緯

西田氏は,過去の公判で「契約担当者は公募型企画競争の評価委員にはならない」「公募型企画競争の評価委員は、入札参加業者と接触しない」「入札参加業者から便宜供与を受けることはあってはならない」と証言しました。

これに対し弁護側は,今回,西田氏が,2010年7月に実施された「広報誌等制作業務」公募型企画競争において,①調達責任者である自らが評価委員を務めたこと,②当該調達における落札業者(プレンティグローバルリンクス社)に対して,業務に無関係の個人的なイベントの「案内はがき」等2点のデザインを依頼し,受け取っていたこと,を示す客観的資料を提示し,西田氏に事実関係を確認しました。

いずれも,過去の西田氏の証言と矛盾する事実です。

西田氏はこれらの事実関係を認める証言をしました。

4.同じく上記入札の直後,西田氏自身がグループウェア(Lotus Notes)導入の起案を行い,その結果,当該グループウェアが上記業者によって導入されたこと。しかし,その調達情報が国循のホームページでは公開されておらず,会計検査院の検査受審時にも報告されていないことの経緯

西田氏は,過去の公判で「大規模な契約や特殊な契約については私が担当するが,それ以外は係長・係員が担当し,自分は決裁をする立場であった」と証言しました。

これに対し弁護側は,今回,西田氏が,2010年7月(「広報誌等制作業務」公募型企画競争の直後),①自らが起案し,事務部門にグループウェア(Lotus Notes)を導入する決裁を取ったこと,②その決裁文書にはプレンティグローバルリンクス社の作成した仕様書が添付されていたこと,を示す客観的資料を提示し,西田氏に事実関係を確認しました。西田氏はこれらの事実関係を認める証言をしました。

さらに弁護側は,この調達に関する情報が国循のホームページで公開されておらず,会計検査院に提出した書類にも見当たらないことを指摘しました。これに対する西田氏の明確な釈明はありませんでした。

なお,本グループウェアの調達は小規模なものでしたが,見積価格は数百万規模となっており,当然に入札が行われるべき案件です。国循では,一定のルールに基づき,調達情報をホームページ上で公開しており,当然に本件も公開の対象となるべき案件でした。

また,本グループウェア(Lotus Notes)はIBM社の製品であり,一般的に普及しているソフトウェアです。したがって,そのライセンスの調達および導入は特殊なものではなく,特段,プレンティグローバルリンクス社のみにしかできないものではありません。

以上,3.および4.の尋問によって,西田氏の過去の証言

  • 契約担当者は公募型企画競争の評価委員にはならない
  • 公募型企画競争の評価委員は、入札参加業者と接触しない
  • 入札参加業者から便宜供与を受けることはあってはならない

は信憑性はすべて無に帰したといえます。

5.本事件以外の過去の入札において,西田氏が,当該入札に関する「競争参加資格」について特定の入札参加予定業者1社に提案を依頼し,仕様書に反映させたことの経緯

これも,2.と同様の事例で,西田氏の「入札参加予定業者に,仕様書の作成を依頼することはない」とする証言の信憑性を損なう事実です。

弁護側は,西田氏が,2010年6月に公告された「国立循環器病研究センター次期病院情報システム構築における仕様策定等支援業務」の仕様書作成過程において,入札に参加予定の特定の業者1社から競争参加資格(=入札に参加できる業者の条件)の追加に関する提案を受けたこと,そして実際に仕様書にその一部を反映させたこと,を示す客観的資料を提示し,西田氏に事実関係を確認しました。西田氏はこれらの事実関係を認める証言をしました。

これは,仕様書に書かれる条件(=受託業者が,契約後に実施すべき業務の内容)ではなく,そもそも業者が入札に参加できるかどうかを示す「参加条件」であることから,2.とは質的に違った意味合いを持ちます。西田氏の証言から,実務上,入札業者の参加資格についても,特定1社の入札参加業者から意見を聞くことがある,ということが明らかになりました。

今回はここまでとします。