国循官製談合事件第10回公判傍聴録
国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。
2016年9月12日13時10分〜16時30分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第10回公判が行われました。
この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第10回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。
※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております
国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter
第10回公判の様子
- 裁判官 西野吾一裁判長他2人
- 桑田さんの弁護士 2人
- 高橋さんの弁護士 3人
- 検察官 3人
- 報道関係 5人くらい
- 傍聴者 約20人
検察側5人目の証人への主尋問と反対尋問
今回は前回に引き続き検察側の5人目の証人、涌嶋(わくしま)賢二氏への主尋問と弁護側の反対尋問が行われました。
涌嶋氏はダンテックの元従業員であり、ダンテック社長の高橋さん・桑田さんとともに逮捕され、後に不起訴となった人物であり、国循官製談合事件に関する裁判においては最も重要な証人とも言えます。
国循官製談合事件第9回傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―国循官製談合事件第9回公判傍聴録
前回の主尋問では、終始検察の質問と涌嶋氏の答えが噛み合いませんでした。
第9回公判傍聴録で紹介#仕様書にこだわる検察側と答えが噛み合わない証人
今回の主尋問では、冒頭の検事の質問により、涌嶋氏が逮捕拘留されていた際の取り調べについて
- H26年11月18日までは茂木検事から事情聴取
- H26年11月19日からは山崎検事から事情聴取
- その際は取り調べの可視化の観点から録画・録音を行っていること
が明らかになりました。
傍聴している私には、検事からの質問にはっきりと答えない涌嶋氏に対して、検察は「公判の場で知らない、覚えていないと言っても、取り調べの調書には残っているんですよ」とクギを刺しているかのように聞こえました。
検事 取り調べの際、H25年度入札の仕様書案に高橋さんからダンテック社に強みがあるものを盛り込むように言われたと説明したのではありませんか?
涌嶋氏 はっきり覚えていません
検事 涌嶋さんが言ったから調書に書かれているのではありませんか?
涌嶋氏 書いてあるのならそうなんでしょう
検事 取り調べで嘘の説明をした記憶がありますか?
涌嶋氏 ありません
このように検事の質問に対して涌嶋氏は、終始のらりくらりと答える印象でしたが、検察側としては「調書に書いている」ということで質問を進めます。
確かに、本来であれば検察側の証人なのですがから、検察の質問に対しては検察の思惑通りに答えるはずです。
しかし、涌嶋氏は前回の主尋問の時から「わかりません」「覚えていません」「僕はなんと答えれば良いのでしょう」と、検察側が思うようには答えていませんでした。
傍聴していた私は、涌嶋さんは検事に対してよく思っていないのかな?だから検事に反抗的なのかな?そうなると桑田さんが有利かも?と単純に思いました。
しかし、裁判に詳しい方から、「裁判官は『涌嶋氏はかつて上司であった高橋被告や、顧客側の現場責任者であった桑田被告の前なので、萎縮して被告側が不利になる質問に答えられない』と感じることもあり、かえって調書に書かれていることを信頼する可能性もある」という話を聞き、改めて検事の作成する調書の怖さと裁判の難しさを知ったのでした。
検察は調書の存在をアピール
その後も、
検事 取り調べでは◎◎と説明したのでは?
涌嶋氏 覚えていません
のようなやりとりを繰り返す中で、検事には苛立ちが見え始め、
検事 取り調べ時の録音・録画DVDに収録されている
という内容を涌嶋氏に投げかけるシーンもありましたが、弁護側からは
高見弁護士 録画の内容の一部を持ち出しての尋問には異議があります。録画・録音は、取り調べが正当に行われたかを検証するためにするものであって、被疑者が何を言ったかという根拠とするものではありません。
と異議申し立てがありました。
相次ぐ検事からの質問に
(勾留中は)連日の取り調べと、自分がここから出られるのか出られないのかもわからないという状況で、とてもしんどい時期でした。何を話したか一語一句覚えているわけはありません。調書に書かれているならそうなのではないでしょうか。
と答える涌嶋氏の姿は「もうやめてくれ」と言わんばかりに見えました。
最後の検事からの質問は、今回の事件に対する思いについて問われました。
検事 桑田さん、高橋さんに無罪になってほしいと思っていますか?
涌嶋氏 はい
検事 それはなぜですか?
涌嶋氏 答えなければいけませんか?
涌嶋氏は言葉につまり
今すぐには言えません。考えてからにさせてください
と答え、検察側の主尋問は終了しました。
涌嶋氏の態度が一転した弁護側の反対尋問
休憩後に再開された弁護側反対尋問では、高橋さんの弁護人である高橋早苗弁護士から涌嶋氏に質問が行われました。
高橋弁護士 (H24年度入札前に国循に提出した)見積の価格はどうやって算出しましたか?
涌嶋氏 NECさんからは何も教えていただけなかったので、わかっている情報を元に推測しながら算出しました。
NECは、入札の保守対象機器となっていたNEC製機器についてのダンテックからの見積依頼を断っていたのでした。
結局、H24年度入札はH24年3月19日にダンテック社が落札。
新年度の4月1日まで約2週間弱で引き継ぎを行わなくてはいけませんでした。引き継ぎを十分にできなかったばかりか、年度当初にはNECが導入した利用者管理システムに不具合が頻発し、ダンテックのスタッフが大変困っていた状況が説明されました。結局、NECの利用者管理システムは「使えない」ということになり、ダンテック社は自社で「新利用者管理システム」を開発することになったのです。
第8回公判の検察側証人であったNECの尾崎氏も、H24年度入札でNECがダンテック社に負けたことは心中穏やかではなかったと証言。
中島氏に、NECが入札直前に提出した見積書をダンテック社に転送して中身を見せたのではないのかと、国循を訪れて口頭で詰め寄った。
中島氏は、それに対し、否定も肯定もせず、黙ったままであった
と、第8回公判の最後に証言しています。
そのような事情もあってか、ダンテック社とNECの引き継ぎは時間的な問題以外にも困難を極めたようです。
それまで国循で使用していたNECの機器類は、NECがOEMで他社に作らせたものをNECの型番を付けて販売しているものが多く、仕様がわかりづらく価格も調べるのに苦慮したと涌嶋氏。
落札後に何度かNECの尾崎さんと話をした中で
ダンテック社にはNECの機器保守はできないから降りて欲しい。国循との交渉権を放棄してほしいと言われました。
と涌嶋氏は証言し、このような非協力的なNECとの関係のなかで、ダンテック社は新利用者管理システムを独自に開発する決断に迫られたようです。
慌ただしい引き継ぎで現場が混乱する中、4月1日以降にもNECが利用者管理システムに使っていたバッヂ*1で様々な不具合が起こり、その際、NECからは
4月1日からは業務外です
と不具合に対する対応は全く行ってもらえず、マニュアルなどのドキュメントがほとんど残されていない状況で現場の対応に苦労したことが涌嶋氏から語られました。
雄弁に語る涌嶋氏
これまでの主尋問では、何に対しても「覚えていない」「知らない」と積極的な証言をしてこなかった涌嶋氏。
しかし、反対尋問が始まると、その当時の現場の様子やNECとのやりとりなど、非常に詳細に説明を始めました。
涌嶋氏が国循に常駐し、国循内の医師や看護師などのユーザーが困らないように最善を尽くそうとしていたこと、ユーザーである国循職員と日常的に連絡を取りながら連携していたことなどが伝わりました。
彼の豹変ぶりには、傍聴席のすべての人が驚いたことでしょう。
これまで検事に対してはほとんど反応がなかった様子とは一転し、弁護士からの質問に大きく頷き、積極的に答えていることは、その発言が「元上司を前に言わされている」というものではないことは、裁判官にも伝わったと信じています。
H25年度入札に参加したシステムスクエア社の印象
最後に弁護側より入札2(H25年度入札)に参加したシステムスクエア社に関する質問がありました。
涌嶋氏 入札前にシステムスクエア社から相談したいと連絡がありましたので、システムスクエア社について調べてみました。ネットや周りの人に聞いて調べました。
弁護人 どのようにして調べましたか?
涌嶋氏 ネットで「システムスクエア 入札 実績」などとキーワードを入れて調べると、落札価格が出ているものがありました。落札価格は飛び抜けて安い価格で落札している感じだったので、無茶をして取る会社なのかな?と思いました。
と、システムスクエア社に対してはあまり良い印象を持たなかったことなどが証言され、第10回の公判は終了しました。
次回の第11回公判は、涌嶋氏への反対尋問を一旦中断し、NECの原田氏、システムスクエアの鶴見氏の2人の検察側証人が出廷します。
桑田さんを支援する会では、桑田さんの冤罪をはらすべく動いています。
公判を傍聴するたびに、0.1%を証明する真実が見えてきます。
ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。
桑田さんご自身が書いておられるブログはこちら
*1:バッチ処理(バッチしょり)とは、コンピュータで1つの流れのプログラム群(ジョブ)を順次に実行すること。あらかじめ定めた処理を一度に行うことを示すコンピュータ用語 Wikipediaより