経緯説明⑮~おわりに

「国循サザン事件」の当事者・桑田さんが、そのときの実体験と真摯に向き合って、わかりやすくまとめられた文章です。

何回かに分けて、アップしておりましたが、この回で最後になりました。

緻密に並べられた言葉の奥から、事件に対する率直な思いがあふれています。

 

前回のブログはこちら↓

経緯説明⑭~入札③(2013年度・国循情報システム運用・保守業務委託・再入札)

おわりに

最後に申し上げたいことがあります。

私が国循に着任してから,国循の情報システムは,電子カルテも含めて大きく進歩しました。

職員の方々からも,数多くの感謝の言葉をいただいてきました。

ただ単に,情報システムの質が向上しただけでなく,企業に価格競争をさせることで,国循では,以前よりはるかに安価な金額で情報システムが調達できるようになりました。

これまで,国循は十数年にわたり,ほぼすべての情報システム関連委託業務をNECが受注してきました。

情報システム機器も,ほぼすべてがNECから購入されているものでした。

たとえば,入札①の保守対象機器やソフトウェアは,そのすべてが過去にNECから購入したものであったうえ,実際には使われていない不要な機器や,NECからしか購入できないようなものまで含まれていました。

さらに,国循のサーバ室は,NEC製の不要な機器であふれかえり,ネットワークも整理されず,セキュリティ対策も不十分なまま放置されていた状態でした。

これは,当時のNECに実力がなかった,といえばそれまでですが,別の見方をすれば,NECはこのような「天国」にあぐらをかき,漫然と高額な受注を繰り返していたともいえます。

いわば,国循はNECの「カモ」にされていたのです。

このような状況は,まさに国のいう「一者応札」の弊害そのものです。国循の情報システムは,私の着任によって,「NEC地獄」から抜けだし,大変貌を遂げました。

しかし,今回の私の逮捕・起訴によって,国循は,また振り出し,あるいはマイナス状態に戻ってしまいました。

また,かつてのように税金の無駄遣いが始まっていることでしょう。

国循だけではありません,病院の情報システムの調達関係者は,私のように刑事訴追されることを恐れて,いまや「羮に懲りて膾を吹く」がごとく,戦々恐々の状態と聞きます。

組織にとって必要な機能を備えるべく準備し,かつ金額も安価に抑えてようとしているにもかかわらず,ただ単に,実力に劣る企業が参加できないという理由で,その入札が「公正を害する」ものだ,と断罪することは,果たして正義なのでしょうか

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2016年4月27日に,私の裁判がようやく始まりました。

すでに,最初の強制捜査から2年以上の年月が経ってしまいました。

弁護士からは,裁判はあと2年はかかると言われています。

2014年2月,この件がマスコミで報道されるやいなや,私は実質的な謹慎状態におかれ,同年4月には部長職を解かれました。

さらに同年12月の起訴により,私は強制的に休職を命ぜられ,現在に至っています。

2016年8月末には,私が国循に着任して丸5年を迎え,その時点で私の国循における任期が終了します。

裁判でどのような結果が得られたとしても,もう私は国循に戻ることはできないでしょう。

この事件で,私は多くの同僚や関係者に迷惑をかける形となりました。

それと同時に,多くのものを失いました。

それは,職を取り上げられ,表舞台からの退場を命ぜられ,生活の糧を失い,信頼していた部下や関係者からの裏切りに遭い,と,失ったものは枚挙に暇がありません。

しかし,それでもなお私を信じて支援して下さる方々,あるいは新しい出会いにより知人・友人となった方がいるという事実は,私にとって,大変ありがたいことであると思っています。

この裁判での戦いを通じて,より多くの方々と知り合いになり,また,既知の方々とはより深く知り合い,それらがこれからの私の新しい人生を踏み出していくための端緒となることを希望しています。

今後ともご支援のほど,よろしくお願い申し上げます。

 


 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

「どうして“サザン事件”なの?」と思われた方は、こちらをご覧ください。

『サザン』のわけ