国循官製談合事件 第3回公判を振り返るその2

第3回公判を振り返るその2を更新いたします。

この振り返りは、第2回公判後から始まりました。

桑田さんと支援する会メンバーが公判を振り返って対談し、その内容を皆さんに知っていただくために「公判を振り返る」として更新しています。

◎第3回公判の傍聴録はこちらから。

国循官製談合事件第3回公判 速報 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

◎振り返りその1はこちらから

国循官製談合事件 第3回公判を振り返るその1 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

 今日は前回話題になった「入札の公正性」についてです。

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N)ところで、今回も、第2回に続いて「仕様書」がキーワードでしたよね。西田氏の発言でずっと気になっていることがあるのですが「仕様書の公平性」というのは、何をもって「公平」と考えるのですか?いわゆる「国循基準???」です。

桑田)一般的に,「仕様書の公平性」というのは,仕様書が特定の業者のみに有利な(または不利な)内容になっていないこと,という意味ですね。しかし,現実には,世の中に数多ある業者すべてに対して有利・不利のない仕様書を作るのは無理ですよね。

たとえば,病棟に設置するテレビを買い換える必要があって,「42インチの液晶テレビを30台調達する」ことになった仮定して,そのまま仕様書に書いたとしましょうか。

N)病棟のデイルームに置いてあるようなテレビのことですね。

桑田)はい,そのように想定してみましょう。そこで,たとえばA社は24インチまでの小型テレビ製品しか扱っていない,B社はプラズマテレビしか扱っていないことがわかった。じゃあ,この仕様書はA社に不利にならないように

「42インチ→24インチ」

にしないといけないし,B社に不利にならないように

「液晶テレビ→テレビ」

にしなくてはいけないのか?という問題です。

つまり,仕様書に書くあらゆる文言に対して,ある業者は有利になりうるし,また別の業者は不利になりうる。これはダンテック高橋社長の弁護人である秋田弁護士も初公判で言っていましたよね。業者ごとに強み・弱みがあるのですから,当然,そうなります。

N)もし、そんな風に仕様書を変えて入札したらどうなるんですか?

桑田)確かに多くの業者が入札に参加できるようになりますね。でも一番安い価格を提示した業者が入札に勝ちますから,仕様書に24インチと書いてあれば,わざわざそれよりも値段の高い42インチを提案して入札に負けるようなことはしないですよね。

N)24インチのテレビなんて、デイルームに置いたら画面がちっちゃくて見えないじゃないですか。液晶テレビでもなくブラウン管テレビが来たら・・・(笑)。

桑田)おそらく地デジは写らない(笑)。そうなんです。現場は困るんです。だから42インチぐらいは要るだろうと思って,現場からは「42インチでお願いします」と言うのです。だれも見えない小さなテレビを買ってしまうことの方が税金の無駄遣いですよね。本末転倒です。

N)では、どうすればいいのですか?

桑田)結局,「特定の業者のみに有利(または不利)でない仕様書」は絵に描いた餅のようなもので,実際には実現しえない内容です。そこで,実務的には,「機会の公平」をもって仕様書を作成すればよいだろう,ということになっています。たとえば,

  • 入札が行われる,ということを広く知らせる(入札公告)
  • 十分な準備期間を与える(入札に関する各手続きの時期の間隔を十分長くとる)
  • 仕様書の案に対して業者から意見を聞く機会を設ける(意見招請)

のようなことです。つまり,「こんな入札がありますよ,十分に準備して入札に臨んでくださいね,なにか意見があったら言って下さいね」と言うことによって,業者に対して参加検討の機会を平等に与えることになり,結果,公平な入札となる,ということです。

N)なるほど、意見をいったり、場合によっては文句を言ったりするチャンスを与えるわけですね。

桑田)そのとおりです。もう一点,上記は対外的な意味での「公平」ですが,国循内部での「公平」も大事です。つまり,特定の部署の意見ばかり反映された仕様書になってもいけない,ということです。上の例えでいえば,「なぜ42インチの液晶テレビが必要なのか?24インチでもいいのではないか?台数は30台が適当なのか?」といったことを国循内部できちんとした手続きで決めていく必要があるということです。

N)それはどのような手続きですか?

桑田)このために,仕様書作成段階においては,仕様書策定委員会という,複数部署の代表――場合によっては外部の方も加えて――で構成される委員会が設置されることがあります。その委員会において,仕様書の作成業務が行われます。また,入札公告の前には,契約審査委員会という委員会において,入札の競争性や仕様内容などについて審議されることになっています。

N)では、今回の事件では、こういった「『公平』を確かなものとするための手続き」はすべて行われたということでしょうか?

桑田)いいえ。さっき言ったなかで,実際に行われたのは,入札公告と契約審査委員会のみです。

N)それはなぜでしょうか。

桑田)検察側の尋問ではほとんどそのことに触れられなかったので,詳しくはわからないです。調達でどういった手続きをとるかについては,ルールに則ってすべて西田氏サイド(調達企画室)で決定されるものです。いずれにしても言えることは,公正を確保するための重要な手続きを彼らの判断によって省略したのであれば,彼ら自身が「公正」についてより一層の配慮をしながら手続きを進める必要があったのではないか,ということです。

傍聴した際にもずっと疑問に感じていて、今回の対談で更におかしくないかな?と思ってしまった「入札の公正性」。

確かに特定の業者でないと扱っていないのはいけないのかもしれませんが、そんなことを言っていたら、入札で物を納める業者はみんな同じ物を作った方が良いのか?ということになりそうですね。

この対談で、私Nは「ゆとり教育」のことを思い出しました。かつて「ゆとり教育」が行われていたころ,「みなさんよくがんばりましたね〜みんな一等です!」と、かけっこにも順位をつけなかったことがありました。みなさまいかがでしょうか?

どなたかから「ゆとりですけどなにか?」と言う声が聞こえてきそうですので、支援者Nの毒舌は終わりにしたいと思います。

さて、第3回公判の振り返りその3は、さらに第3回公判内容に突っ込んでお聞きしております。

更新をお楽しみに。

国循官製談合事件 第3回公判を振り返るその1 – 国循サザン事件―0.1%の真実―国循官製談合事件 第3回公判を振り返る その1