起こった事実はたった一つ〜99.9の最終回から考える〜

こちらのブログでは、2016年4月27日から公判の始まった「国循官製談合事件」について、この事件で被告とされている桑田成規さんの冤罪をはらすべく支援する会メンバーを中心に公開しています。

今回は、公判とは直接関係がありませんが、非常にタイムリーであり、支援する会Nがとても共感したドラマについて、書かせていただきます。

そのドラマとは「99.9〜刑事専門弁護士~」です。

日曜劇場『99.9―刑事専門弁護士―』

このドラマは、2016春からの連続ドラマで最高視聴率を取ったことでも話題となりましたね。

私がこのドラマに注目したのは、ドラマのスタートが初公判に近い4月17日だったからで、最初はここまで話題になるとは思っていませんでした。

私にとって「刑事裁判」とは、テレビで見る世界であり「冤罪」とは、袴田事件*1のような、歴史上の出来事・・・くらいの認識でした。

しかし、桑田さんから、ご自身の置かれている立場をうかがうことになり、そして支援させていただくことになってから、少しずつ「冤罪は歴史上の出来事なんかじゃない。今でも冤罪事件に巻き込まれる人はいるのだ」と認識するようになりました。

そんな中で始まったこのドラマ。

そして、ドラマと並行して回を重ねる桑田さんの裁判。

もちろん、99.9はドラマですから、ある程度演出している部分もあります。

しかし、回を重ねるごとに「警察・検察って、こんなことするの?」というシーンが多くなり、見ている人の中には「もしかして、冤罪って身近にも起こるじゃないの?」と思うようになったのではないかと思います。

そして最終回の昨日。

主人公松本潤さん演じる深山弁護士は、中丸雄一さん演じる石川さんの「僕はやってない」の言葉に、無罪を証明するために奔走します。

そして真犯人を見つけ出し、結審の法廷でのシーン。

父を冤罪事件に追い込んだ、当時の担当検事(奥田瑛二さん)が傍聴席に入廷してきたことを確認してからの台詞がこちら。

この事件はすでに真犯人がみつかり、その罪を全て認めているため、石川さんの無実は明らかです。
ですので事件に関して僕からみなさんに訴えることは、特にありません。

(回想シーン)

ですが、石川さんの無罪が確定しても、生活が元通りなるわけではありません。
何もなかった、平穏な日々を、幸せを、過ぎ去った時間を取り戻すことはできません。
誤った逮捕、起訴によって、その人の人生は大きく狂わされてしまうのです。
今回の事件は、刑事裁判で最も大きな罪とされる冤罪事件です。
冤罪事件は多くの人を不幸にします。

被害者とその家族は、罪なき者を憎み、ある日突然身に覚えのない容疑で加害者にされてしまった者は、やり場のない怒りと、恐怖をかかえ日常を奪われてしまうのです。
そしてその家族は、犯罪者の家族として世間の非難にさらされる。

日本の裁判における裁判の有罪率は99.9%。
なぜこのような高い数字がでるのでしょうか
それは、国家権力である検察官が起訴を決めた内容は正しいはずであると、誰もが疑わないのです。ですが本当にそうなんでしょうか。
我々はそこに隠されているかもしれない、本当の事実を見逃してはならないのです。
どうかみなさん、目で見て、耳で聞いて、考え、自分の答えを探してください。
起こった事実はたった一つです。

弁護人からは以上です。

このシーンは、約3分強にわたって、ゆっくりと冷静に、深山弁護士が自分自身のことだけではなく、全ての冤罪事件に巻き込まれる当事者とその家族の気持ちを代弁するように話していきました。

この法廷での深山弁護士の話し方は、桑田さんの弁護人である我妻弁護士を見ているようでした。

国家権力である検察官が起訴を決めた内容は正しいはずであると、誰もが疑わないのです。ですが本当にそうなんでしょうか
我々はそこに隠されているかもしれない、本当の事実を見逃してはならないのです。

この台詞は、これまで踏み込まなかった領域にドラマが踏み込んだのだなと思った瞬間でした。

ドラマの中でも第5話以降くらいから、検事たちの事実をねじ曲げようとする様子、上司の検事が部下の検事に圧力をかける様子などが描かれていました。

その様子からも「事実がねじ曲げられることがあるのか?」という気持ちを、視聴者にも抱かせたでしょう。

奇しくも、先日の第4回公判では、桑田さんの主任弁護人である高見弁護士が「調書のメモが捨てられているんですよ」と、検察官の異議申し立てに対して裁判長に訴えました。

国循官製談合事件 第4回公判速報その2 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

しかし、冤罪事件の本質、何が問題なのか、どれほど重い事件なのか。

そのことをしっかりと台詞に盛り込んだのは、最終回でしたね。

突然身に覚えのないことで逮捕され、連日厳しい取り調べを受け続け、ついには調書にサインをしてしまった石川さん。

石川さんのお父さんが深山弁護士に訴えた一言。

先生、身に覚えのないことで人はこんなに簡単に逮捕されてしまうものなのでしょうか

この台詞は、冤罪事件に巻き込まれた家族なら、みなさん言われると思うのです。

そして、冤罪事件の罪の重さを問う最後のシーン。

結審の出た後に、深山弁護士と父親の事件の担当検事 大友検事正が、すれ違いざまに交わしたやり取りです。

深山弁護士:事実が見つけられず真犯人が見つかっていなかったら、石川さんはあなた達に殺されていたかもしれない。

大友検事正:我々検察は被告人の犯罪を証明する立場にある。
我々の努力の結果有罪になったとしたら、裁判所がそう判断したということだ。
我々が殺したなどとは聞き捨てならないな。心外だよ。

深山弁護士:裁判所の判断に、大きな有罪のバイアスをかけるのはあなたたちですよ。

大友検事正:いやいや勘違いしている。
我々は被害者のために犯罪を犯した人間を許すことはできない。
この社会の正義を全うする使命がある。

深山弁護士:正義とか真実とかって言う、100人いたら100通りの考えがあるようなもの、僕は信じないですよ
ある日突然、僕はあなたたちに父を奪われた。
その日を境に全てが一変した。
あんたはその歪んだ正義とやらで、何人の人生を狂わせるんだよ。
冤罪事件で加害者にされた人間も、犯罪の被害者なんだ。
僕はその立場に立ってずっと弁護を続ける。
あなたはあなたの正義というものを貫くというのであれば、僕は事実というものを信じてあなたの前に立ち続けますよ。

このシーンの中では「あんたはその歪んだ正義とやらで、何人の人生を狂わせるんだよ」が印象的でした。

法廷での台詞にもありましたが

無罪が確定しても、生活が元通りなるわけではありません。
何もなかった、平穏な日々を、幸せを、過ぎ去った時間を取り戻すことはできません。
謝った逮捕、起訴によって、その人の人生は大きく狂わされてしまうのです。

そうです。

冤罪事件では、もちろん「無罪」にならなければいけない。

しかし「無罪になったから良かった、解決した」ということではありません。

桑田さん自筆の経緯説明⑮〜おわりににもありますが、一瞬にして世界が一変するのです。

その一変した時間は戻ってこないし、失った人間関係や信頼を取り戻すことは容易ではありません。

それでも、冤罪事件であれば、真実を追究し、無罪を勝ち取らなければなりません。

深山弁護士の台詞をお借りしますが、支援する会としても同じ気持ちです。

どうかみなさん、目で見て、耳で聞いて、考え、自分の答えを探してください。
起こった事実はたった一つです。

第4回からの反対尋問では、ねじ曲げられ、消された事実を一つ一つ掘り起こし、証拠を提示しています。

法廷内でのやり取りは何が事実なのか?

一緒に答えを探してください。

次回第5回の公判は6月28日(火)13時10分〜 大阪地裁603号法廷です。

今後の公判予定はこちら

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桑田さんを支援する会では、桑田さんの冤罪をはらすべく動いています。

公判を傍聴するたびに、0.1%を証明する真実が見えてきます。

ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。

 

 

*1:袴田事件(はかまだじけん)とは、1966年静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生した強盗殺人放火事件、およびその裁判死刑が確定していた袴田巌元被告が判決の冤罪を訴え、2014年3月27日に死刑及び拘置の執行停止並びに裁判の再審を命じる判決が(即時抗告審での審理中のため未確定)なされた事件。日本弁護士連合会が支援する再審事件である。

袴田事件 – Wikipedia