第29回公判傍聴録 反対質問2回目その2

国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。

2017年7月26日13時30分〜17時00分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第29回公判が行われました。

この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第29回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。

※第11回より更新が滞っており、ご迷惑をおかけいたしております。順次遡りましてアップしてまいりますので、今しばらくお待ちください。

※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter

第29回公判の様子

  • 裁判官 西野吾一裁判長他2人
  • 桑田さんの弁護士 2人
  • 高橋さんの弁護士 2人
  • 検察官 2人
  • 報道関係 2人
  • 傍聴者 約13人

第29回公判傍聴録 反対質問2回目その1

前回に引き続き、第29回公判の様子です。

休憩後は第3の公訴事実について質問が行われました。

 NDDを参加させたのは?

2013年度の公募型企画競争入札において,受注する意思のない企業NDDを競争に参加させたうえ,ダンテックより高値で応札させるとともに,ダンテックが作成提出すべき企画提案書について助言指導を行った。

この第3の公訴事実については、これまでの公判で証言台に立たれた何人もの方に質問が行われています。

問題となっている2013年度の公募型企画競争入札は、2013年度の一般競争入札において、第一交渉権を獲得したシステムスクエア社が不調に終わったのち、第二交渉権を持つダンテックとの交渉に進まず、公募型企画競争入札としてやり直すことになったという流れで行われたものです。

この入札でも、どうしても一者応札を避けたかった国循の契約係は、当時現行業者であったダンテックの涌嶋さんに「他の入札参加者を連れてきてほしい」と何度も頼んでいました。

桑田さん自身も一者応札を避けたほうが良いことはわかっていたので、仕様書の要件を満たすであろうIBMに入札参加の打診をしますが、結局IBMは入札に参加はしないことになります。高橋さんの供述でも、高橋さん自身もIBMに入札参加の打診をし、その結果として、IBM自体は参加をしないが、IBMの協力会社であるNDDを入札参加候補企業として高橋さんに紹介したという事実があります。

桑田さんは

NDDが入札に参加することが決まった頃、IBMは入札に参加しないようだということを高橋さんがおっしゃっていた

と説明しますが、検察からは

第9回公判で「お付き合い業者のNDDを呼ぶことになったのは、だれの提案ですか?」という質問に、涌嶋さんは「桑田先生との打ち合わせの結果」と答えている。

また、第10回の公判で涌嶋さんは「ぼくは桑田先生もNDDがお付き合い業者だということはわかっていると思っていた。“おつきあい”という言葉を使ったかどうかはわからない」と証言している。

と「IBMにお付き合い入札を頼み、その結果NDDが参加することになったこと」を桑田さんが主導したのだろう詰め寄ります。ここでいうお付き合いというのは、受注する意思がないという意味です。まさに第3の公訴事実の核を成す部分です。

それに対し、桑田さんは

その時、涌嶋さんが「”おつきあい”とは言っていない」というところが重要だと思います。話の前段をなくして、切り取られた情報だけで決めつけるのは怖いことです

と反論。

そうなのです。桑田さんのいう「前段をなくした切り取られた情報」というのは、先ほどの涌嶋さんの証言「桑田先生との打ち合わせの結果、お付き合い業者のNDDを呼ぶことになった」の前に、涌嶋さん自身が

センターからの依頼ですかね

と証言していた部分のことです。

整理すると

(検察)お付き合い業者のNDDを呼ぶことになったのは、だれの提案ですか?

(涌嶋さん)センターからの依頼ですかね。桑田先生との打ち合わせの結果、呼ぶことになった

というやり取りがあったのです。ここでいうセンターは国循のことですが、この点について、桑田さんは

涌嶋さんは、国循の契約係から「一者応札を避けるためにどこか業者を連れてこい」と言われて困って私に相談してきた。そこで私と話し合った結果、IBMなら今回の仕様書の要件を満たすのではないか、という話になった

と供述しています。つまり桑田さんの認識としては、「センターからの依頼」とは「国循の事務方からの依頼」のことであるとわかります。そして、涌嶋さんが「おつきあい」という言葉を使わずに桑田さんと話を進めていたとしたら、涌嶋さんと桑田さんの間で認識の違いがあっても不思議ではありません。

この「センターからの依頼ですかね」の一文があるかないかで「誰が頼んだのか」という印象が全く変わってしまうのです。

検察は、こうして都合の良いところだけを切り取って引用し、それをつなぎ合わせて自分たちの主張を正当化しています。

ですから、第3の公訴事実にある

受注する意思のない企業NDDを競争に参加させた

というのが、国循の事務方(契約係)からの依頼であれば、桑田さんが罪に問われるべきことではないと考えられます。

企画提案書を見たのか?確認したのか?

続いてダンテックが作成提出すべき企画提案書、プレゼン資料について、桑田さんがダンテックに助言指導を行ったかどうか?について。

まず検察からは

入札の評価委員がプレゼン資料について事前に相談を受けたり指導したりすることについて許されるか、許されないか、良いか、悪いかどう思うか

と質問があり、桑田さんは

一般常識としては、特定の業者だけに行うのは機会の公平という観点からみて、良くないだろうと思う

と答えます。

まずここで、桑田さんの口から「良くないことだ」と言わせています。

その後、

一般論で、業者が作成した企画提案書やプレゼン資料など、それを見て中身を確認するということについて、許されるか許されないか、その当時の理解はどうだったか

と続き、桑田さんは

確認するというのは、どういう行為をさしますか?

と、逆に検察に質問すると

見るということです

とのこと。

見るだけですか?それはどうでしょうか?見せられれば、目に入ってもしかたない

と、検察が何を言わせようとしてるのかがわかっている上で、桑田さんはこう答えたと思われます。

このように、検察は多くの場合どのようにも取れる質問をし、二択で答えさせます。

この質問でも「見たか・見ていないか」「確認したか・していないか」の二択なのですが、「パッと見た」も「じっくり見た」も「ここにあるなと確認した」も「じっくりと中身を確認した」も全て「見た」「確認した」になります。

この誘導的とも言える検察の質問に「見ました」「確認しました」と答えてしまえば

ほら、やはりお前がやったのだ

と、なるわけですよね。

今回の法廷では、桑田さんはこのやり取りに対して、細かく確認しながら答えていましたが、これが突然逮捕され、状況が把握できない動揺した状態で取り調べを受けるような状態なら、検察の誘導的な質問に考える暇もなく答えてしまうかもしれません。

そして、検察の都合の良い答えを記録され「あの時こう答えたじゃないか」と、後に否定できくなるのではないか?と、自分の身に置き換えて考えてみると、とても怖い気がしました。

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またご相談させてくださいの真意は???

検察は、平成25年4月9日(公募型企画競争入札の前)にダンテックの高橋さんと桑田さんの間で送受信されたメールについて、こだわりを持って質問を繰り返しました。

このメールは、桑田さんが涌嶋さんと高橋さんに「仕様書案」を確認してもらうために送ったメールで、

今回の仕様書の中に入れる技術者の要件について、その要件を入れると相手はほとんどいなくなると思いますがいかがですか?

という内容。

桑田さんが気になっていたのは、その要件を入れることで競争性は保たれるのか(特定の業者しかできないということはないのか)?ということで、そこを業界の方に聞きたかったということです。

それで高橋さんからは

富士通系が両方とも対応できます

という内容を含んだ返信メールをしています。

桑田さんはそこが一番気になることであり、この高橋さんの返信メールの内容に関しては、「競争性は保たれる」ということが記憶に残っていて、そのメール本文中の他の部分に関しては記憶に残っていなかったようです。

しかし検察は、高橋さんからのメールの文末に

プレゼン資料含め、またご相談させてください、と書いてある

と書かれていた部分に焦点を合わせて質問を続けました。

桑田さんとしては

当時その一文が何のことかわからなかったのではないか。だからその部分に対する返信もしていない。その後高橋さんからもプレゼン資料のことで相談は受けていない

と答えるのですが、検察は

これを読むと、公募型企画競争入札のプレゼン資料についてご相談させてくださいとしか読めない

と、どうしてもそこは外しません。もちろん、第3の公訴事実には

ダンテックが作成提出すべき企画提案書について助言指導を行った

というのが入っているわけですから、このメールの一文にこだわるのはわかります。

しかし、当時の桑田さんはこの公募型企画競争に関する仕事だけをしていたわけではなく、電子カルテやその他の業務もたくさんしておられました。その中で、前回の(第2の公訴事実に関する)入札が不調に終わり、急遽行うことになった公募型企画競争入札の仕様書案を作成することは、多忙ながらも期限内にやり終えてしまわなければならない急務の仕事であったはずです。

ですから桑田さんにとっては、仕様書案に盛り込む要件について、その要件が競争性を確保できるのかどうかが、先ほどのメールの中ではもっとも重要なことであったはずです。

そのような状況にある人が、メールの末尾に添えられた「またご相談させてください」という文面を見たとしても、単なる社交辞令か「何かあればまた言ってくるだろう」くらいにしか意識しないということは、誰にでも想像がつく話だと思います。

それでも、検察は

相談させてくれと言われてなぜ気にならないのか

書いてあるのに相談はなかったのか

と「書いてあるのになぜ」と、そこにこだわるのです。

そして「相談がなかった」と言っても「なぜなかったのか?」「書いてあるのになぜだ」と質問が続き、

どうして?なぜ?と言われても、なかったものはなかったのだ!

という、当たり前のことが法廷では通用しません。

法廷では、気にならなかったこと、相談がなぜなかったのかということ、これを説明しない限り「本当は気になっていたのかもしれない」「実際に相談があったのかもしれない」と印象がグレーに転じるということを、私も傍聴を続ける中で感じるようになりました。

この後も、企画提案書について細かいやり取りが続きました。

しかし、どのやり取りも

その時どう思ったのか

なぜそうしなかったのか

今考えてみれば、その時はどうだったのか

と、4年以上も前の「その時考えたこと」や「その時の気持ち」を聞くものでした。

そのようなことを聞かれても、普通は覚えていませんよね。

印象の強かったこと、一つや二つなら覚えているかもしれませんが、今回の裁判のように膨大な資料に関して、どうだった、どうなんだと言われても、さすがに時間も経ちすぎています。

この事件の争点は、事件になったから焦点が当たっているだけのことで、当時の行為として、当事者が強い印象をもってそれを記憶しているとは限りません。むしろ、平々凡々とした日々の出来事の一つが、随分時間が経ってから、事件によって急にクローズアップされる、ということの方が多いのではないでしょうか。

桑田さんは、当時、日常業務を黙々と行っていたわけで、その日常の中の何を考えて誰と何を話し何を話さなかったのか、何をして何をしなかったのか、何が起こり何が起こらなかったのか、またそれぞれの理由は何か、といったことなどは、細かく覚えていないのが当然といえます。

しかし、法廷では、被告人は検察に比べて圧倒的に不利な立場にあります。

法律では、犯罪の立証は検察の義務であり、その立証が十分でなければ、推定無罪の原則が働き、被告人は「シロ」になる、というタテマエです。

しかし、法律の実務においては、これはまったくの机上の空論にすぎません。

実際には、検察は犯罪を十分に立証せずに「グレーに持ち込む」だけで、最終的には裁判所が「クロ」と判断する(してくれる)ことがほとんどです。

なぜなら「被告人はウソをつくもの」「ウソでないというなら、被告人が客観的な証拠をもってそれを証明しなさい」というのが、実際の裁判所の考え方だからです。

さらに、ここでいう「客観的な証拠」というのがくせ者です。

客観的な証拠とは、書類とか映像といったものを想像しがちですが、実はそれだけでなく、被告人以外の証言も含まれます。つまり、誰かが「被告人はこんなことを言っていた」と証言したとすれば、被告人が「それは違う」と言ったところで、被告人の言い分に勝る十分強い証拠となりうるのです。

その証言が「被告人はこんなことを言っていた」というはっきりした内容ではなく「被告人はこんなことを言っていたような気がする」「そうだったんじゃなかったかなぁ」というような、曖昧な証言だったとしても、検察に有利な内容であれば採用されるということです。

ここに刑事裁判の危うさ、冤罪の原因があります。

ひとたび事件が起こると、事件の関係者は被告人から離れていきます。そして自分は関係ないという証言をしがちです。利害関係者であればなおさらそうなります。

そのような状況で、ただ被告人の言い分だけが軽んじられる、そのようなことが裁判では起こっているのです。

こういった実情は、実は、法曹関係者と裁判の当事者以外、意外と世の中には知られていないのです。

少しでも裁判に関心を持てば分かることですが、大半の人は「自分には関係ない」「起訴されるぐらいのことをしたんだから有罪になって当然じゃないの」という考えを持っています。このような無関心が、本来実現されるべき正義を歪めているのではないかと考えます。

※先日観た映画「三度目の殺人」は、まさに裁判に関心を持ち、司法にも疑いの目を持っているかどうかで、見方が全く変わるなと思いました。みなさまもどうぞご覧になってみてください。

この日は最後に少しだけ桑田さんへの反対質問を残し、時間いっぱいの17時に閉廷となりました。

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桑田さんを支援する会では、桑田さんの冤罪をはらすべく動いています。

公判を傍聴するたびに、0.1%を証明する真実が見えてきます。

ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。