『国循サザン事件』第4回公判を終えて(5)

今回は最終となります。

前回示した国循官製談合事件(『国循サザン事件』)第4回公判で示した弁護側反対尋問の要点の要点の8~10について,西田氏の証言を踏まえて概説します(桑田)。

第4回公判記事で紹介された弁護側尋問の要点

 

この記事は,マスコミでは報道されない公判の様子をお伝えすることによって,より多くの方にこの『冤罪事件』の真実を知ってもらうことを目的として書いているものです。私自身が公判の法廷の場で見聞きしたことを元に,自らの認識と意見のみを書いておりますので,記載内容には一定のバイアスがあること,そして私の弁護人の見解や弁護団の弁護方針とは無関係であることをご承知おきください。

8.1者応札の案件については,国循の契約審査委員会,契約監視委員会で西田氏が説明を求められること、また政府機関からも一者応札についての理由説明を求められることがあることの経緯

9.国循の契約監視委員会において,西田氏が,一者応札になった案件についての説明を求められた際「仕様書策定委員会を開催して適切に措置する」と回答しているにもかかわらず,入札1および入札2において仕様策定委員会を開催しなかった経緯

10.国循がホームページで当時公開していた「契約の適正化に関する取組について(平成22年4月)」に,「仕様策定委員会を開催する」とあるにもかかわらず,入札1および入札2において仕様策定委員会を開催しなかった経緯

西田氏は,過去の公判で「一者応札となっても,契約係は何も困らない」と証言しました。

これに対し弁護側は,西田氏に対し,国循の契約審査委員会,契約監視委員会の議事録を提示し,当該委員会において西田氏が1者応札となった案件の対応として,現況および今後の対策を逐一説明していたことを指摘しました。また,西田氏の過去のメールを提示し,監督官庁である厚生労働省からの指示として,西田氏が,調達に関する政府機関からの質問の回答を求められ,一者応札の理由について説明していたことを指摘しました。西田氏はこれらの事実を認める証言をしました。

さらに,弁護側は,西田氏に対し,①国循の契約監視委員会の議事録を提示し,西田氏が契約監視委員会において,1者応札に対する今後の対策として「仕様書策定委員会を開催して適切に措置する」と回答していること,②国循がホームページに掲載していた「契約の適正化に関する取組について(平成22年4月)」を提示し,国循が「調達の必要性や仕様書等の作成について、契約担当者以外を含めた複数の者で構成される仕様書策定委員会において、類似機器等を比較するなど適正に決定している。 」と対外的に明言していることを指摘し,それにもかかわらず,入札1・入札2において,西田氏が仕様書策定委員会を設置しなかった理由を質しました。西田氏は,これらの事実を認めながらも「他の入札では仕様書策定委員会を開いているケースもある」と証言しました。

そもそも,仕様書策定委員会は,

国循における物品や役務の調達に際し必要に応じた調達ができるよう調達方法・仕様書・評価基準その他資料及び競争参加資格等を策定し、仕様書等の公正性を確保し調達手続きの適正性と透明性を確保することを目的としている(情報システム運用・保守業務の契約等に関する第三者委員会報告書,平27・11・13)

ものであり,入札の「公正性」を確保するための重要な手続きの一つです。国循では,電子カルテシステム導入のような10億円を超える高額な入札の際にも,

平成22年11月から同年12月にかけて開催されたWGコアメンバー会議において情報システム構築(電子カルテ)に関する仕様書について議題となったという記述はあるものの、仕様等策定委員会の開催記録や議事録は存在しない情報システム運用・保守業務の契約等に関する第三者委員会報告書,平27・11・13)

という状況でした。このことから,西田氏がこれまで国循内外で説明してきた「仕様書策定委員会の開催(による手続きの適正化)」は形骸化しており,実態としては「タテマエ」と実務が乖離した状況であったことがうかがえます。

第4回公判に関する一連のシリーズはこれで終了です。(桑田)