国循官製談合事件 第6回公判傍聴録

国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。

2016年7月13日13時10分〜17時00分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第6回公判が行われました。

今回は検察側の2人目の証人として、当時国循契約室契約係長であった中島雅人氏が出廷。検察側主尋問、弁護側反対尋問が一気に行われました。

この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第6回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。

※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter

<目次>

 第6回公判の様子

  • 裁判官 西野吾一裁判長他2人
  • 桑田さんの弁護士 2人
  • 高橋さんの弁護士 3人
  • 検察官 3人
  • 報道関係 7人くらい
  • 傍聴者 約17人

今回の証人は、前回までの証人 西田氏の当時の部下である中島氏。

「覚えているのか?いないのか?」

「聞いたのか?聞いていないのか?」

ということに焦点に当てて、3時間半にわたって行われました。

入札資料の受け渡し状況

公判は検察側からの主尋問から始まったのですが、検察からは

  • 24年度入札が一般競争入札であったこと
  • 競争参加資格確認資料として業務体制表を、入札参加予定業者であった2社に提出するように伝えていたこと
  • その業務体制表は「落札後の履行能力を見るため」に提出をさせたこと
  • 業務体制表などは3部提出させたこと
  • 業務体制表からの履行能力についての判断は、専門的な内容につき情報統括部にお願いしていたこと
  • 業務体制表の提出期限は平成24年3月16日(金)の17時であったこと

などについて、中島氏に証言を求めました。

中島氏は、提出期限と提出資料の受け渡しについて何度も「3月19日(月)が入札期日であったため、それまでに履行能力を判断し、入札に参加できるかどうかを参加予定業者に伝えるため、16日(金)の17時を提出期限としていました。期限を過ぎると参加できなくなることもあり、NECからもダンテックからも、書類が届いたらすぐに桑田部長に届けていました」という証言をしていました。

誰が?いつ?どのように教えたのか?

上にでてきた「業務体制表」は、以下の公訴事実にでてくる「運用支援業務従事者数等が記載された書面」のことです。

2012年度の一般競争入札において,NECが競争参加資格審査のために提出していた運用支援業務従事者数等が記載された書面を,電子メールにてダンテック高橋氏に送信し,NECの体制を教えた。

つまり、検察は、入札のために参加予定業者から国循に提出された「業務体制表」を桑田さんがダンテックに流した、と主張しているのです。

この入札は、「入札1」「24年度入札」と言われている内容です。

※桑田さんの経緯説明から、入札1の背景がわかります。

経緯説明⑪~入札価格での真っ向勝負のため、必要な情報を提供しただけなのに…

 

この入札は、国循の情報システムに関するもので、問題になった24年度入札までは長い間NECの独占状態だったようです。

24年度入札には、現行業者のNECと初参加のダンテックの2社が参加し、ダンテックが落札しました。

ここで問題になっている

NECが競争参加資格審査のために提出していた運用支援業務従事者数等が記載された書面を,電子メールにてダンテック高橋氏に送信し,NECの体制を教えた

という内容。

確かにここだけを読めば「桑田さんがダンテック社を有利にするためにそうしたのか?」と思いそうですね。

しかし、次章以降で詳しく説明するとおり、最初の証人であった西田氏の証言、今回の中島氏の証言を聞く限り、この見方には誤りがあるように感じました。

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平成24年度の業務に12人必要と決めたのは誰??

第2回〜4回までの公判で西田氏は「入札は全ての参加者に対して公平かつ公正であるべき」と何度も証言しました。

その中には、問題の24年度入札に関しては、新規に参加する企業が不利にならないようにとの配慮から、企業が入札価格を算出する際に参考になるよう、運用支援業務従事者数等を仕様書に明記することになったという証言がありました。

この点について、第3回〜第5回の弁護側反対尋問でも何度も西田氏と弁護団が意見を戦わせるシーンがありました。

というのも、この「運用支援業務従事者数」というのは、入札の金額を算出するために大きな鍵となるからです。

一人当たりの人件費がわかれば、それに人数を掛け算すればおおよその人件費を算出でき、入札金額に含まれる人件費部分を推定することができます*1。なので、この運用支援業務従事者数」、つまり業務に何人の人が従事するのか?という情報は、新規に参加する業者にとって非常に貴重な情報になります。

そこで、国循の作った仕様書では、運用支援業務従事者数を管理者1人と従事者11名の合計12名体制と明記したと、西田氏も証言しています。もちろん、この仕様書はNECの目にも触れるわけですが、この入札の時点でNECは現行業者なので、当時の運用支援業務従事者数はわかっていますね。

弁護側は、この「12人」という人数について、西田氏にも今回の中島氏にも何度も証言を求めました。

傍聴する私には、最初は「12人と仕様書に書いておいたのだから良かったんじゃない?」という気持ちと「それならなぜ、桑田さんがダンテック社に教えた!ということをそこまで問題視するのか?」という気持ちがありました。

しかし、この「12人」という人数の算出方法について問題のあることが今回の公判でわかってきました。

西田氏の証言と中島氏の証言の食い違い

実は、当時、現行業者であるNECの運用支援業務従事者数は「9人」でした。しかし、西田氏が仕様書に書いたのは「12人」。ここで3人増えています。

人数が増えれば入札の予定金額も上がってきますので「3人増える」ということに関しては、西田氏に対して何度も質問がありました。

そこで西田氏は「NECの9人という体制は、あくまでもこれまでの23年度業務に対して必要な人数である。その入札は24年度業務についてであり、24年度に想定される業務量から算出して伝えている」と説明したのです。

あくまでも「24年度の業務を考えて割り出した人数」ということです。

では、この「12人」という人数を誰が割り出したのか?」です。

中島氏は検察官の

何を根拠にこの人数を算出しましたか?

という質問に対し

情報システムに関する運用・保守業務は大変専門的なものであり、私たち契約係では判断できかねますので、情報統括部、桑田部長に必要人数の算出をお願いしていました

と答えたのです。

ここで桑田さんの主任弁護人である高見弁護士から「異議あり!」の声が。

高見弁護士が

前回の証人の西田氏は、運用支援業務従事者数の12人という人数は、平成23年度の(当時の現行の)人員が12名ということを前提として、契約係が案を出したと証言されています。中島さんはこれとまったく食い違う証言をしています。

検察側の予定主張は、中島さんが桑田さんに業務体制表を渡したときの状況に関するものであり、仕様書の作成過程については含まれていません。また、中島さんの供述調書にもこのことは一切書かれていません。

事前に提出された予定主張にもなく、捜査段階で作成された供述調書にも全く記載されていないことに関する尋問に対して、弁護側は全く準備することができず防御することができません。

と発言した所で裁判長の仲裁が入り、以後、以下のようなやりとりがありました。

  • 中島氏の証言は記憶から?推測から?
  • 再度、平成24年度入札の際に、入札参加者に事前提出を求めた入札関係書類について確認。
  • 平成24年度入札の契約係の窓口は?→中島係長。
  • 専門的な内容を確認するのは?→情報統括部で窓口は桑田部長。
  • NECとダンテックから提出された業務体制表は誰に届けたのか?→桑田部長。
  • どのようにして渡したのか(デスクに置いた?手渡し?)→入札関係書類は重要なものなので確認してほしいと手渡しした。
  • いつ届けたのか?→業者から送られてきたらすぐに。リアルタイムで届けた。
  • NECとダンテックのどちらが先に届いたのか?→どちらが先に届いたということは覚えていない
  • 情報統括部の判断結果はいつ聞いたのか?→3月16日中には口頭又は電話で返答してもらった

このやり取りの中で、中島氏が、入札関係書類を桑田さんに「手渡しした」「確認してほしいと言った」と言った中島氏の証言については、何度も繰り返し証言を求めていました。

公判の最後にも裁判官から「覚えていたのか?もしくはこの時の記憶はないが、いつもそのようにするからこの時も同じようにしただろうという推測の話しなのか、どちらか?」と確認があったことを思うと、かなり重要な部分であることは間違いありません。

ここで休憩が挟まれたのですが、高見弁護士が異議を申し立てた「予定されていない内容の尋問」の件があり、弁護団から「長めの休憩を」という要望が出され、30分の休廷となりました。

〜続く〜

 

 

*1:この入札の対象となった「情報システム運用・保守業務」は、文字どおり「運用」と「保守」に別れています。「運用」が人件費に相当し、「保守」が機器保守費用に相当します。