国循官製談合事件 第7回公判傍聴録
国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。
2016年7月25日13時10分〜17時20分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第7回公判が行われました。
今回は検察側の3人目の証人として、国循情報統括部部長代理であった原口亮氏が出廷。検察側主尋問、弁護側反対尋問が行われました。
また、今回は被告人とされている桑田さん自身が証人尋問を行うシーンもあり、非常に珍しく興味深い公判となりました。
”被告人による証人尋問”を体験して – 誰か知る松柏後凋の心
この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第7回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。
※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております
国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter
<目次>
第7回公判の様子
- 裁判官 西野吾一裁判長他2人
- 桑田さんの弁護士 2人
- 高橋さんの弁護士 3人
- 検察官 3人
- 報道関係 7人くらい
- 傍聴者 約20人
今回の証人は、桑田さんの当時の部下で、その後国循情報統括部部長代理として桑田さんの後任となった原口氏。
尋問は、H24年度入札で作成された仕様書について、またシステムの仮想化について、NECとの関わりについて、かなり専門的な内容に焦点に当てて、4時間以上にわたって行われました。
主尋問にはスラスラと
前回同様、検察側の主尋問から始まりましたが、検事からの質問には言葉に詰まることなく淡々と答える原口氏。
これは、あらかじめ検察と証人との間で、証人テストと言われる、検察と証人の間で打ち合わせや公判時のリハーサルのようなことが行われているからと考えられます。
とはいえ、すべての証人が今回のようにスラスラと答えられるわけではないので、原口氏はかなり落ち着いていたように見えました。
第7回の公判は、これまで以上に専門的な内容でしたが、約1時間に及ぶ検察と証人とのやりとりが続きました。
検察側の主尋問が終わったところで15分間の休憩となりました。
反対尋問では慎重に
休憩後は、まずダンテック社の高橋さんの主任弁護人である秋田弁護士から質問が始まりました。
- H24年度入札のNCVCネットに関する仕様書は自由競争入札の公正に基づいて、主に原口さんが作成されたのですね?
- H23年度にNECが構築した国循内のネットワークシステムは、ログイン時に複数のパスワードが必要であったり、複数のグループウェアが混在していたりと、国循内から使いにくいという声があったのでは?
など、様々な質問が行われたのですが、主尋問の際のスラスラと答える原口氏とは一変し、質問に対して非常に慎重に、言葉を選んでいる様子。
秋田弁護士が何を質問しても「それはどういう意味ですか?」と何度も聞き返し、まるで自分が答える内容によっては、自分が非常に不利になることを懸念しているように見えました。
NECとの関係
原口氏は、桑田さんが国循に着任する前からIT戦略室長として情報システムに関する業務に関わっており、H24年度入札でダンテック社がNCVCネットに関する業務を落札するまで、NCVCネットの業務を行っていたNECとの窓口役を務めていました。
H23年度まで長年に渡り、国循の情報ネットワークはNEC1社の独占状態で、国循の独立行政法人化後に始まった一般競争入札でもNECの1社応札となる状態が続いていました。
また、NCVCネットとは別の、一般競争入札するべき事案についても国循はNECと随意契約を行い、そのことを当時の契約係が把握できておらず、国循内で問題になったことや、その際の仕様書を原口さんとNECの担当者でやりとりして作成したのではないか?など、秋田弁護士から突っ込んだ質問が行われました。
この、問題になった入札に関しては、本来は1千万円を超える入札となるため一般競争入札になるべきところを、契約期間を分割して1回の契約が百万円を超えないように調整し、契約件名を少しずつ変えながら随意契約を行っていたのではないのか?という疑惑も持たれています。
この契約は、NCVCネットの入札でNECがダンテック社に競り負けた直後のもので、桑田さんはこれには関わっておらず、担当は原口さんでした。この日の反対尋問では何度もこのことについて質問が行われたのですが、肝心な部分では「そうは思わない」「記憶にない」と、曖昧な回答しか返ってきませんでした。
秋田弁護士の反対尋問は1時間以上にわたり、その後同じくダンテック社高橋さんの弁護人である水谷弁護士からの反対尋問となりました。
仕様書案の作成と業者の関与
第2回〜第6回の公判でも「仕様書作成に特定の業者の関与」については、繰り返し質問されてきました。
一人目の検察側証人西田氏は、
- 仕様書はどこ(どの部署)が作成するのか?
- 仕様書を作る際に、入札に参加する業者から情報提供を受けても良いのか
という質問に対して
- 仕様書は基本的には契約係が作成するが、専門的なことや技術的なことは、現場(発注部署)に協力を依頼する
- 仕様書を作る際に、入札に参加する業者や特定の業者から情報提供を受けることは、入札の公平性を害するためにしてはならない。もしも情報提供を受けたことがわかった場合には、契約審査委員会に諮り、当核入札をやり直す手続きなどを行う。
と証言していました。
その際にも、西田氏はあくまでも
「仕様書案を作らせたことはない。仕様書案に必要な情報提供を求めたに過ぎない」
と主張していますが、実際には弁護側から西田氏と入札参加予定業者との「濃密な」メールのやりとりが証拠として示されるシーンもありました。その中には仕様書案と書きながらも、表紙の末尾には「国立循環器病研究センター」の文字が記載されているものもあり、傍聴している私には「客観的にみて、特定の業者の関与はガッツリあるよね・・・」と思わざるをえない状況でした。
今回の尋問で、水谷弁護士からは
- H24年度入札の仕様書案の原案をNECに作ってもらったことがあるのでは?
- 仕様書について項目の追加や削除をNECに手伝ってもらったのでは?
- NECの担当者と協議しながら進めたのでは?
という質問が、原口氏とNEC担当者との間で交わされたメールの内容を提示しながら行われました。
予定時間まで残り30分というところで、質問者は桑田さんの弁護人 我妻弁護士に交代となりました。
これまでの西田氏の証言との食い違い
我妻弁護士からも、仕様書作成に関してのNECとの関わりについて質問が続きました。
- H24年度入札の仕様書作成に関して、NEC1社だけに意見を聞いているが、1社だけに意見を求めても良いのか?
- 特定の業者に意見を求めるのは問題があるのではないのか?
という質問に対し、原口氏からは
- 2社以上から意見を聞くことが望ましいが、意見を求めるのが1社だからと言って問題はない
- 他の業者に意見を求める義務はないと考える
との答えがありました。
この他にも、入札公告前にNECの担当者から、入札に関する質問が送られたことなどについて、我妻弁護士が証拠のメールを提示しながら質問しましたが、原口氏は「思い出せない」と回答。
これら一連の反対尋問を聞きながら、
「この原口氏のやってたことって、西田氏の証言ではダメだと言ってたことじゃないの?」となり、いったい何が正しくて、何が問題なのだろうか?
これなら、桑田さんの起訴事実より何より、それまでの国循の体制自体に問題があるんじゃなかったの?
そんな素人考えが私の頭をよぎったのですが、毎回傍聴している人なら、私以外にも同じような疑問を持った人はいるのではないかと思います。
桑田氏本人による証人尋問
桑田さんご本人のブログでも書かれていますが、第7回公判の最後には、桑田さん本人から証人の原口氏に対して質問が行われました。
これは、かなり異例のことで、本来被告人が尋問を行うことは制度上では許されていますが、実際に行われることは珍しいようです。
桑田さんが質問する頃には、閉廷予定時間の17時直前だったこともあり、裁判長からはかなり厳しい言葉が発せられました。
- 時間が押しているので短く
- 被告と証人が議論になるような場合は打ち切る
など、これまでの証人や弁護人に対する口調とは明らかに違う口調だったことで、あらためて被告人とされている桑田さんの大変な立場を垣間見た気がしました。
桑田さんのブログでは「尋問技術が足りない」と書かれていましたが、傍聴していた私には尋問はとてもスムーズで落ち着いて行われているように見えました。
今回の裁判はとにかく内容が専門的で、特に今回は専門的な内容が多かったため、私には、検事の質問も、弁護人の質問も、聞きながら理解に苦しむ場面もありました。
しかし、事情の全てを把握している桑田さんと、当時まさに上司と部下の関係であり、同じく専門職である原口さんのやりとりは、専門的な内容ながらもとてもわかりやすかったように思います。
原口氏も、それまでの弁護人からの質問への回答とは違い、迅速に、しかもはっきりと答えていたのが印象的でした。
詳しい内容は桑田さんのブログをご覧ください。
最終的には予定時刻より20分延長となった第7回公判でしたが、今回問題とされている入札に関して、誰がどのように関与したのかについて、かなり具体的になったように思います。
次回第8回公判は8月8日(月)13時10分〜17時、大阪地裁にて行われます。
実際に法廷で傍聴すると、表情や声、間の取り方など様々な様子から真実が見えやすくなります。
ぜひ1度は足を運んでみてください。
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