国循官製談合事件第11回傍聴録(その1)
国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。
2016年9月26日13時10分〜16時30分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第11回公判が行われました。
この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第11回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。
※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております
国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter
第11回公判の様子
- 裁判官 西野吾一裁判長他2人
- 桑田さんの弁護士 2人
- 高橋さんの弁護士 3人
- 検察官 3人
- 報道関係 4人くらい
- 傍聴者 約15人
検察側6 人目の証人
第11回の公判は検察側の証人が2人出廷しました。
1人目はNECの医療ソリューション事業部第 3ソリューション部に所属する社員で、当時セールスマネージャー(課長)だった原田健吉氏。
NECは国循が発注していたNCVCネットの運用保守業務をH23年度まで、ほぼ独占状態で請け負っていました。
今回の原田氏への主尋問は、主にH25年度入札(入札2)に関して行われました。
NECはH24年度入札(入札1)でダンテックに敗れた後、翌年のH25年度入札には参加していません。
今回証人の原田氏は、H25年度入札にNECが参加しなかったことについて
NECはH25年度入札の仕様書の条件を満たしていなかった
と証言しています。
他方、NEC不参加の理由として、第9回公判の証人で当時のNECの入札担当者であった尾崎氏から、次のような事情があったと証言がありました。
- ダンテック社製の新利用者システムを使うこと
- 落札後の再委託は全体の50%以内とすること
国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―
しかし、第9回公判の傍聴録でも考察したように、結局、NECは仕様書の条件を満たせなかったのではなく、もし条件を満たすために「能力の高いエンジニア」や「(人件費の安い他社に再委託することなく)自社社員」を大企業であるNECが準備するならば結果的にコストが高額になり、「競争入札」という価格競争に勝てる見込みがないから参加しない、という判断であったのだろうと考えられます。
NECとシステムスクエアの関係
H25年度入札にNECは参加しませんでしたが、システムスクエアが参加し落札しました。
検事 NECとシステムスクヱアはどういう関係なのですか
原田氏 NECの一部の業務を委託する下請け・協力会社としてのおつきあいがありました
検事 システムスクエアの社長である喜来(きらい)さんと面識がありましたか?
原田氏 業務委託の打ち合わせなどで面識がありました
検事 H25年1月頃にNECの過去の実績について調べたことはありますか?
喜来社長よりNECのシンクライアントに関する実績について問い合わせがあり、実績を調べて回答しました
とのこと。
病床数500床以上の実績
続いて
検事 喜来さんからの調査依頼のときに、病床数について指定がありましたか?
原田氏 500床以上という指定がありました。条件を満たす実績として徳島大学病院様の実績があることがわかり回答しました
この時点では、なぜシステムスクエアの社長がNECの原田さんにそのような実績を聞くのかわかりませんでしたが「500床以上」という数字は、H25年度入札の仕様書に記載されている条件「500床以上の病院での仮想化システムの構築実績」が当てはまります。
その後の原田氏の証言から、システムスクエアはNECの指揮下でさまざまなシステム構築業務を請け負っていたことがわかり、先日の尾崎氏の証言から明らかになった「NECが自社で受注した業務を下請けに丸投げしていた」ということと結びつきました。
要するに、検察からの質問の回答では「NECの過去の実績をシステムスクエアの社長から聞かれたので答えた」ということになっていますが、この「NECの過去の実績」は実際にはNECから業務を委託され現場で動いていた「システムスクエアの過去の実績」でもあるということになります。
この後の検事と原田氏のやりとりでは、原田氏はあくまでも
徳島大学病院での500床以上の病院での仮想化システムの構築に関して、システムスクエアに業務委託をしていたということは知らなかった
と主張していますが「知っていたか、知らなかったか」ということについては、原田氏本人のみぞ知るということになります。
この部分の質問については秋田弁護士から異議申し立てがありましたが、検事はあくまでも「知っていたか、知らなかったかの確認」とし、「知らなかった」ということを印象付けたいようでした。
原田氏はNECがシステムスクエアなど、下請けに業務を委託していたことは「知らなかった」としてあまり公にしたくなさそうでしたが、前回の尾崎氏の証言で、国循内に常駐していたNECの技術者が実は下請け・孫請けの職員だったということが明らかになっていますので、原田氏と尾崎氏の証言も一致しません。
仕様書に記載された「500床以上の病院での仮想化実績」はダンテック有利なのか?
今回桑田さんの公訴事実には
ダンテック以外の業者の参入が困難となるような条件を盛り込んだ仕様書を作成し
とあります。この「ダンテック以外の業者の参入が困難になる」という条件には「病床数500床以上の複数の病院でのシステム仮想化実績がある」という表現が入っていたためとされています。
確かに病床数500床以上の病院というのはかなり大きな病院となりますし、原田氏の説明でも、NECも徳島大学病院で導入を始めたという実績しかなかったように、大手でもこの仕様書の条件を満たす会社ばかりではないようです。
そして、さらに「その条件は故意にダンテックを有利にさせた」と印象付けるかのような質問が続きました。
検事 ちなみに, 証人のこれまでの御経験を基に教えていただきたいんですが、病床数が 500床なのか 400床なのか, 100床違うことで病院のシステム構築に要求される技術レベルに影響を与えることは何かありますか。
原田氏 根本的な違いといったものはないと思っております。
検事 なぜ、そうお考えなんでしょうか。
原田氏 病院を構成する診療部門の構成であるとか、そういったところ、システム面を含めてですね。根本的な差異といったものはないというふうに考えております。
検事 1 0 0床違うぐらいでは病院の仕組み等にはそんなに大きな変更はないと。そういうことですか。
原田氏 はい、そのように認識しております。
このやりとりでは、あくまでも仕様書に「500床以上」を記載したのはダンテックを有利にさせるためであり、本来は必要のない条件だったと印象付けます。
検事からは「ちなみに, 証人のこれまでの御経験を基に教えていただきたいんですが」とありますが、原田氏はシステム開発に関わる技術者ではなく、セールスマネージャーという立場だったと冒頭に証言しており「IT関係、システム開発等の技術者として働いたことはない」と言っています。
その方に「100床違うことで病院のシステム構築に要求される技術レベルに影響を与えることはあるかどうか」と質問するのは、畑違いのような気がしてなりませんが、どうしても「本来は必要のない条件だった」ということを強調したいのでしょうか。
ちなみに、国循の病床数は612床であり、500床以上の病院です。国循で行う業務の受託者に対して「国循と同規模病院での実績」を求めることはきわめて合理的であると思うのですが、なんとしても検察は「必要のない条件だった」と証人に言わせたかったようです。
NECの実績がシステムスクエアの実績として記載された?
弁護側の反対尋問では、原田氏に対して「システムスクエアの社長からNECの実績について問い合わせがあった」ということについて質問が行われました。
検事とのやりとりで、システムスクエアの社長である喜来氏より問い合わせがあり、原田氏が実績を調べてメールなどで伝えたことは先に記しました。
水谷弁護士からは、H25年度入札に関してNECが参加を断念したことや、システムスクエアが落札したことなどを知っていたかどうか?の質問などが行われ、原田氏は「自分が担当ではなかったが、知ってはいた」と答えてました。
さらに水谷弁護士からは
水谷弁護士 NECの構築実績を教えて欲しいと求められた目的はなんだったかご存知ですか?
原田氏 いいえ、細かい目的はきいていません
水谷弁護士 では、どういう理由でこの情報が必要だと理解されていたのですか
原田氏 技術的な、あるいは実績についての情報提供が必要なんだろう、と想像していました
水谷弁護士 その後システムスクエアが国循に提出した資料に、あなたが提供した情報に基づいて実績が記載されていたことはご存知ですか
原田氏 いいえ、その後どうされたのか、詳しくは聞いておりません
水谷弁護士 では、あなたが提供した情報を喜来社長がどのように使われたかは全くご存知なかったのですか
原田氏 何かしらの回答材料にされたとは想像しましたが、具体的にどう使われたかまでは把握していませんでした
その後、異議申し立てを数回挟みながら息の詰まるようなやりとりが続いたのですが、水谷弁護士は、主尋問の際に
NECを超える構築実績というものを子会社やグループ会社が持つことはない
と原田氏が答えたことについて追求。
原田氏はシステムスクエアに関して「グループ会社」「子会社」のような表現をしていたのですが、
水谷弁護士 システムスクエアはNECの子会社ではありませんよね?グループ会社でもありませんよね?
原田氏 はい
水谷弁護士 システムスクエアは下請けで、グループ会社や子会社ではなく、パートナー会社という位置付けですね
原田氏 はい。資本関係という意味でのグループ会社や子会社ではありません
と、システムスクエアがNECの子会社やグループ会社ではないことを確認した後、
水谷弁護士 NECの子会社でもグループ会社でもないシステムスクエアが、NEC本体の行ったシステムの構築実績を自社の実績として提出するというのは、どういう場合に許されるんでしょうか
原田氏 そのプロジェクトに参画していたという事実があれば、実績として扱うというのも考えられると思います
水谷弁護士 それは NECさんの下請業者として、実際にそのシステム構築に関わったという場合ですか
原田氏 そうです
ここで水谷弁護士からの質問は別の質問に移りました。
「プロジェクトに参画していたという事実があれば、自分たちの実績として記載しても良い」というのは、一見まともな言い分に聞こえます。
しかし、原田氏は自身がシステムスクエア喜来社長に送ったメールの内容、つまりNECの500床以上のシステム構築実績である徳島大学病院の件について、システムスクエアが下請け業者として入っていたことは知らなかったと言っていたはず。
とすると、つじつまが合わないとは思いませんか?
その後も500床以上の病院でのシステム仮想化実績についてのやりとりと、H25年度入札において、参入障壁となったとされる「システムの仮想化」に関連し、その当時どのくらいの業者に実績があったのか?などが弁護側から示されました。
約1時間半の原田氏への証人尋問の後休憩が取られ、第11回公判1人目の証人が終了しました。
検察側7 人目の証人へ(次回へつづく)
第13回公判は2016年10月26日(水)13時10分〜大阪地裁。
桑田さんを支援する会では、桑田さんの冤罪をはらすべく動いています。
公判を傍聴するたびに、0.1%を証明する真実が見えてきます。
ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。