国循官製談合事件 第5回公判傍聴録

国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。

2016年6月28日13時10分〜17時00分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第5回公判が行われました。

前回に引き続き検察側の証人西田氏に対して、弁護側からの反対尋問2回目と、検察側の補足が行われました。

この速報は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第5回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップいたします。

※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter

<目次>

 第5回公判の様子

  • 裁判官 西野吾一裁判長他2人
  • 桑田さんの弁護士 2人
  • 高橋さんの弁護士 3人
  • 検察官 3人
  • 報道関係 7人くらい
  • 傍聴者 約14人

前回に引き続き検察側の証人西田氏に対して、桑田さんの弁護団と桑田さんと同時に起訴されているダンテック社の高橋社長弁護団による反対尋問が行われました。

その後、検察側の最終弁論まで、15分の休憩を挟んで4時間弱みっちりと行われました。

うっかりミスですまされるのか?

今回は高見弁護士の質問から始まりました。

第4回の質問内容から、以下について「もう一度教えてください」という形で進められたのは

入札1・入札2において,契約係が,予定価格が80万SDR(1億円程度)を超える政府調達であったにもかかわらず,WTO(世界貿易機関)協定のルールで定められている意見招請手続きをとらなかった経緯

国循がホームページで当時公開していた「契約の適正化に関する取組について(平成22年4月)」に,「仕様策定委員会を開催する」とあるにもかかわらず入札1および入札2において仕様策定委員会を開催しなかった経緯

国循の契約監視委員会において,西田氏が,一者応札になった案件についての説明を求められた際「仕様書策定委員会を開催して適切に措置する」と回答しているにもかかわらず入札1および入札2において仕様策定委員会を開催しなかった経緯

の内容です。

今回の事件で問題になっている入札1は2012年3月19日開札(一般競争入札:最低価格落札方式)、入札2は2013年1月30日開札(一般競争入札:最低価格落札方式)。どちらも年度末に行われています。

この2つの入札はいずれも予定価格が高額なので、本来であれば、最低価格落札方式ではなく総合評価方式で一般競争入札を行い、意見招請という手続を行わなければなりません。それが、入札の「公正さ」を保つためにWTO(世界貿易機関)協定で定められている国際協定のルールなのです。

意見招請は、国循が作成した仕様書に問題がないかを確認するために、仕様書の案を公開して、広く意見を求める制度です。入札に参加したいと思う業者にとっては、とても大切なものだと思います。ところが、この入札1、入札2において、前回西田氏は「うっかりミスして行わなかった」と証言したのです。

そればかりか、その前年2011年3月17日に行われた入札も、意見招請を行っていません。この入札の結果は、NECの一者応札で、落札率99.98%でした。落札率というのは、予定価格に対する入札金額の割合です。業者は、予定価格を事前に知ることはできないルールなのに、99.98%ということは、その差わずか0.02%。かりに1億円が予定価格だったとすれば、9998万円で入札した、ということです。これのどこが公正な入札だったのでしょうか?

奇妙なことに、その直後に行われた2011年5月31日の電子カルテシステムの入札では、意見招請が行われているのです。西田氏は、「うっかり忘れた」後の入札では意見招請をきちんと行い,さらにその後につづけて「うっかり忘れた」というのです。

このことについて、高見弁護士の尋問は次のようなものでした。

(高見弁護士) うっかりミスではなく、年度末だから間に合わせるためでは?

(西田氏) ございません

(高見弁護士)  手続(意見招請)をしていたら間に合わないからでは?

(西田氏) ございません

(高見弁護士) では、うっかりミスに気付いたのはいつですか?

(西田氏) 検察官に入札について説明をしている中で気付きました

(高見弁護士) このミスについて国循には報告したんですか?

(西田氏) わかった後にしました

(高見弁護士) 報告をして、おとがめなどはなかったのですか?

(西田氏) 特にありません

(高見弁護士) 国循に強制捜査が入った後、国循内に第三者委員会が立ち上がったと思いますが、そちらには報告したのですか?

(西田氏) 報告したかしなかったか覚えていません

(高見弁護士) したかどうか覚えてないのですか?このことは大事なことではないのですか?重大なミス(国の定める様々な手続きをしなかったこと)なのでは?

(西田氏) 重大なことかどうか、私には判断できません

え?えぇぇ???

これは私だけでなく、傍聴席のほとんどの方がそう思われたはずです。

国際協定のルールで定められている手続きをとらなかったんですよ。何回も。

しかも初めの入札は、1者応札で落札率は99.98%ですよ。

こういう状態の入札って、世の中では「官製談合」って言うんじゃないんですかね?

だからこそ、意見招請を行って、公正な入札が行われるように厳しくチェックするのですよね。

日本を代表する国立循環器病研究センターは、それをうっかりミスで許してくれるような組織なんでしょうか。

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責任者として、最後の確認をしないのか?

この後、契約係が作成する仕様書について、入札に関与する特定の業者から情報を得るかどうかについての質問が続きました。

本事件以外*1の過去の複数の入札において,西田氏が,当該入札に関する仕様書案,機能比較表,機種選定小委員会報告書を特定の入札予定業者(1社)から直接メールで受け取っていたこと。そして,当該入札において,その業者が落札率100%で落札をしていた

第2回の主尋問において「契約係が仕様書を特定の業者に依頼することはあるのか?」という質問があり、西田氏は「入札に参加する予定のある業者に依頼することはない」と証言しています。

しかし、前回の反対尋問では、今回の入札に参加し、落札率100%で落札した業者から、入札前の時点で西田氏個人にあてたメールに添付された仕様書案が提示されました。

今回はそこをもう一歩踏み込んで質問があり

(高見弁護士) メールの文章には「仕様書の具体的な文章について、導入に影響があるので修正していただけませんか?」という内容が書かれていますね。このメールの後、西田さんが仕様書の内容を修正したのではありませんか?

(西田氏) 記憶にありません

ここで記憶喚起のために、そのメールが保管されていた、当時のフォルダを提示し

(高見弁護士) このように、このフォルダに保管していますよね?

と問うも

(西田氏) する人もいますね。私はフォルダを使わないので

と否定。

その後仕様書案のファイルのプロパティ情報が提示され、作成者は西田氏の名前となっていました。

そのファイルの作成者は西田氏で、最終更新日時は2013年2月1日16時15分。

西田氏が先ほどの仕様書変更のメールを業者から受信したのは2013年2月1日16時2分。

メールを受信し、変更内容を確認して仕様書のファイルを更新するまで約13分。

最終更新された仕様書と、受信したメールで文章の変更を依頼した部分の文章は全く同じということも、高見弁護士から示されました。

それでも西田氏は

(西田氏) 仕様書を作成したのは私かもしれないが、最終更新を私がしたかどうかはわからないでしょう。私は部下から見せられた仕様書を確認しただけです。

と反論しました。

しかし、職員が何人もいる国循内で、直接個人(部署の責任者である西田氏)に届いたメールを誰か他の部下に見せ、そこから部下が仕様書を変更し、再度その部署の責任者である西田氏が確認し、仕様書の確定版を保存するまでに13分。そんなことがあるのでしょうか?

高見弁護士が「あなたがメールを確認して修正し、あなたがフォルダのファイルを更新したのではありませんか?」と聞くのも当然だと思うのは、私だけでしょうか。

それでも証言台の証人は「自分かどうかはわからない」「記憶にない」の一点張りでした。

その後も、様々な入札においての不正と思える内容、特定の業者が案として送ってきた仕様書や比較表をそのまま使っていたのでは?という質問を続けていました。

途中、たまりかねたのか検察から異議申し立てが入りましたが、異議は棄却。

しかし、裁判長からは「証人のミスをあげつらう場ではないことは意識して質問してください」と厳しい表情で弁護団に注意をする場面もありました。

この注意は「厳しいな」と思いましたが、注意の内容を考えると、裁判長も証人が様々なミスをしているということは理解されているのかな?と思ったのでした。

続いてダンテック高橋さんの弁護団にバトンタッチされ、水谷弁護士から反対尋問が行われるのですが、後日追記させていただくことにいたします。

『国循サザン事件』第4回公判を終えて – 国循サザン事件―0.1%の真実―『国循サザン事件』第4回公判を終えて(桑田さんによる振り返り)

*1:入札1、入札2以外