国循官製談合事件第23回公判傍聴録

国循サザン事件-0.1%の真実-無罪を訴える桑田成規さんを支援する会Nです。

2017年2月28日13時30分〜16時00分、大阪地方裁判所第603号法廷にて、国循官製談合事件(「国循サザン事件」)の第23回公判が行われました。

この傍聴録は、逮捕起訴された桑田さんを支援する会として動いているNが、第22回公判の様子や感想を傍聴した本人としてアップしています。

※第11回より更新が滞っており、ご迷惑をおかけいたしております。順次遡りましてアップしてまいりますので、今しばらくお待ちください。

※Twitterではなるべくリアルタイムに投稿しております

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会 (@southerncase) | Twitter

第23回公判の様子

  • 裁判官 西野吾一裁判長他2人
  • 桑田さんの弁護士 2人
  • 高橋さんの弁護士 3人
  • 検察官 3人
  • 報道関係 2人
  • 傍聴者 約10人

桑田さんの被告人質問始まる

これまで第2回〜22回は、検察側・弁護側の証人尋問が続いていましたが、今回より被告人質問*1が始まりました。

桑田さんご自身がFacebookで

本日の公判から3期日程度は弁護側からの質問です。おそらく5月の公判から検察側の質問となります。人生において、自分の言葉一つ一つがこれほどの注意を払われて受け止められる機会はまずないでしょう。そして、検察からは厳しい質問が続くでしょう。しかし、いずれにしても、私は真実を話します

と書かれているように、これまでにも増して重要な公判となります。

被告人質問の第1回は、弁護人である我妻弁護士からの質問で始まりました。

これまでの点と点が繋がった

13時30分の開廷後、裁判官から証拠やその他の確認が行われたのち、桑田さんの弁護人である我妻弁護士からの質問が始まりました。

まずは経歴の確認。

気象大学校入学から就職、就職先でのやりがいについて。その後医学の道に進んだ経緯などなど・・・一つ一つゆっくりと確認しながら進められました。

その後、国循に着任するまでのこと、着任した当時の国循の様子、なぜ桑田さんが国循に呼ばれることになったのか。

これまでの証言でも、これらの様子はそれぞれの証人のお立場から証言されてきましたが、ご本人が話される「その時のこと」は、やはり違います。

それは、ご本人しか知ることのない、真実であるからでしょう。

我妻弁護士からは、

  • 誰と
  • いつ
  • どのような方法で

と、かなり具体的な質問が行われ、その当時のメールなどを示しながら当時のことが語られました。

15分の休憩を挟み、約2時間強行われた質問では、これまで証言台に立たれた証人の名前が次々に出てきました。

証人尋問では、もちろん裁判官に「虚偽の証言はしない」と宣誓するわけですが、やはり虚偽とまでは行かないまでも、保身に走ったと思われる証言は多々ありましたし、それを傍聴している人たちが気付いてしまう場面が何度もありました。

そうして、それぞれの立場を抱えた証言を聞いてきた上で今日の公判を傍聴すると「あぁこういう風につながっていたのか」と、点と点が繋がるようでした。

なぜ桑田さんが被告人にならなければならなかったのか。

桑田さん本人の第1回被告人質問を終えての手記

初めての被告人質問を終えて(桑田さんの個人ブログ)

こちらにまとめておられます。

運用支援業務従事者数は極秘情報か?

桑田さんがまとめておられるように、1回目の被告人質問では、入札1について我妻弁護士から質問が行われ、一つ一つを確認するように、細かく進められました。

この入札1については、

2012年度の一般競争入札(以下,入札①といいます)において,NECが競争参加資格審査のために提出していた運用支援業務従事者数等が記載された書面を,電子メールにてダンテック高橋氏に送信し,NECの体制を教えた。

経緯説明⑩~こねくり回した「公訴事実」で起訴される

という、公訴事実の内容です。

検察側は「桑田さんがダンテックに送信したのは、 NECが入札のために提出した、次年度の ECの運用支援業務従事者数がわかる資料であり、入札の公平公正に反する行為である」と主張しています。

これは、入札予定価格を算出するにあたり「運用支援業務従事者数×一人にかかる人件費」が大きな鍵になるからですが、問題の入札1まで国循で業務を行っていたのはNECであり、NECはもちろん運用保守のために何人の人員が必要か知っています。

対して、新規参入であったダンテックは、入札予定価格を算出するにあたり仕様書に書かれていた「運用支援業務従事者数は12人」で計算していたわけですが、実際には現行業者NECは9人で運用支援業務に従事していました。

この「運用支援業務従事者数は12人」という人数は、当時調達実務の責任者であった、西田浩二調達企画専門職が決めたものでした。

西田氏は第2回〜第4回公判で検察側証人として証言しました。

反対尋問の際、高見弁護士が以下の点を質問しました。

入札1(2012年3月19日開札,一般競争入札)において,契約係が,当時の受託業者(NEC)の技術員が9名であったにもかかわらず,当該入札の予定価格を12名で算出した経緯

国循官製談合事件 第4回公判速報その3 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

この質問に対して、第4回公判でこのようなやり取りがありました。

・当時、国循の業務を受託していたNECの業務体制表は、当時、契約係が入手しており、その資料は西田氏と当時の部下が共有するフォルダに入っていた。

・桑田さんは、その共有フォルダの中身を見ることができないフォルダであった。

ここまでの証拠を弁護団が提示してもなお、

業務体制の人数については、業務量に見合う人数を書いてほしいと桑田さん*1に依頼し、情報統括部で仕様書を作成するようになっていました。 桑田さんに前年度の技術員が12名だったと伝えたのは、部下から聞いたことをそのまま伝えたことであり、自分では資料を見ていませんでした。

国循官製談合事件 第4回公判速報その3 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

と、あくまでも仕様書に運用支援業務従事者数は12人」と記載したのは、自分が決めたことではないと逃げる西田氏。

また、

「NECの9人という体制は、あくまでもこれまでの23年度業務に対して必要な人数である。その入札は24年度業務についてであり、24年度に想定される業務量から算出して伝えている」

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

とも説明しました。

傍聴していた私も、この時点では「NECが9人でできていたものを、なぜ仕様書に12人と書いたのか」に意識が集中していました。

その後、当時NECで国循の営業担当であった尾崎氏が第8回公判で証言。

その際には、西田氏と大きく証言が食い違ったのです。

NECは従来通りの常駐人数で事前資料を提出、しかし・・・

第8回公判の証人、元NECの尾崎氏は入札1に参加できるかどうかの事前審査のために提出した書類について、業務体制の人数は「9人」で提出したと証言しました。

このことに対し、元ダンテック社長 高橋徹さんの弁護人である秋田弁護士と尾崎氏の間で以下の質疑が行われました。

(秋田弁護士)

国循の仕様書には12名と記載があったと思うのですが、それでもNECは9名で提出したのですか?

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

(尾崎氏)

仕様書には機器が新しく変わるなどの追加項目はありましたが、現行体制を変えるほどの内容ではないと判断し、現行と同じ9名と記載した業務体制表を提出しました

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

 しかし、西田氏は

H23年度が業務を9人で行っていたとしても、H24年度も9人で行えるという判断ではなく、12人必要だと判断した。

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

と証言。

確かに、発注側の責任者であった西田氏が「H24年度は12人必要だ」と決める権限があり、それが手続きとして間違っているわけではありません。しかし、西田氏は証言台で繰り返し「専門的なことはわからないので、仕様書の作成に関しては統括部長である桑田さんに任せていた」「自分は何もわからない」と言っているのです。

なのに、この業務体制の人数だけは「9人ではなく12人必要だと判断した」とはっきり証言できるのは、なぜなのか?非常に疑問に感じませんか?

もし、現行業者であったNECが「9人で大丈夫」と判断しているのに、西田氏が「12人必要」と仕様書に書いたとしたら、仕様書からしか情報を入手できないダンテックは、明らかに不利になります。

では、そんなに簡単なからくりで西田氏が「故意」に仕様書に「12人」と記載したのでしょうか。

その部分は、過去の公判における秋田弁護士と尾崎氏のやり取りから明らかになっています。

秋田弁護士が尾崎氏にも認識を問うた「積算資料」*2では、

国循が入札予定価格の根拠とする「積算資料」で、そこに掲載されている単金が70~80万円。仮に、間をとって、単金を75万円と仮定し、運用技術者「12人」とします。すると、1年間の費用は、 75万円×12人×12ヶ月=1億800万円

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

となります。

しかし、尾崎氏は

「積算資料」に掲載されている、いわゆる「単金(1人・1ヶ月あたりの人件費)」は、NECにとっては安すぎる

とした上で、

NEC本社の社員の単金よりもかなり安く、協力会社のシステムスクエアを使ったとしても、それより高くなります。

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

と答えたのです。

NECが国循に提出していた資料では

NECの単金は100万円で運用技術者「9人」。つまり、1年間の費用は、 100万円×9人×12ヶ月=1億800万円

国循官製談合事件 第8回公判傍聴録 – 国循サザン事件―0.1%の真実―

先ほどの積算資料を元に12人で計算した時の1年間の費用と一致するのです。

要する西田氏は、NECの単金を知ったうえで、国循が基準とする単金が安すぎることから、人数を増やすことによって、国循の入札予定価格をNECの見積額に合わせようとしたのではないか?ということです。

これは、この入札1でダンテックが入札に参加するまで、長年にわたってNECの独占状態が続いており、その全てを知り尽くした西田氏のなせる技だったのではないか?と、私を含めた傍聴者が考えても不思議てはないと思いますが、いかがでしょうか?

しかも、この尾崎氏の証言により、NECは下請けに「丸投げ」であった事実が明白になりました。

現行業者の業務内容や業務体制を知ることは、入札に必要な行為

この事実に加え、弁護側証人として出廷してくださった医学情報学の権威であり、現場で入札にも関わっておられる松村教授、黒田教授、またダンテックと同じく入札経験のある業者の代表取締役 清水氏の証言から、

新規参入する業者は、現行の業務体制について知る権利がある

ということは明白です。

それは、運用保守業務の入札においては、現在すでに運用されているシステムがあり、それを止めることなく運用しなければならない以上、入札参加業者が現在の状態を知ることは必須であり「現行業者のみが知っている」ということこそ入札の公平・公正を害することであるからです。

これまでの証人尋問を振り返っていくと、公訴事実1にあたる

2012年度の一般競争入札において,NECが競争参加資格審査のために提出していた運用支援業務従事者数等が記載された書面を,電子メールにてダンテック高橋氏に送信し,NECの体制を教えた。

意見陳述書(2016/04/27) – 国循サザン事件―0.1%の真実―

という内容は、逮捕に値する内容なのか?ということになります。

そして、桑田さんが初公判で述べた意見陳述にもある通り

問題の入札に関する業務は,当時行われていた情報システムの保守・運用業務(これを現行業務といいます)とほぼ同じ内容のものです。したがって,入札に参加する者が,現行業務の体制を知りたいと思うのは当然のことです。私は,ダンテックの高橋さんからのこのような求めに応じて,その当時の現行業者の体制を知らせたのです。そもそも,毎年毎年,同じ業務内容で入札が繰り返される今回のようなケースでは,業務内容をもっともよく知る現行業者が圧倒的有利な立場にあります。よって,公平性を確保する意味においても,現行業務体制は,参加予定者から求めがあれば当然教えるべき情報です。私の行った行為が,入札の公正を害するものでないことは,火を見るより明らかです。

意見陳述書(2016/04/27) – 国循サザン事件―0.1%の真実―

を思い出し、検察にとって何が問題だ、起訴・逮捕に値する内容だったのか?を考えなくてはいけないと思いました。

桑田さんはなぜ体制図を送ったのか

そもそも、桑田さんは、入札3ヶ月前(平成23年12月)の時点で、当時の現行業者であったNECの次年度の見積金額や常駐技術者の人数を把握していました

入札の仕様書案作成の中心となったのは、原口亮IT戦略室長で(原口室長も検察側の証人として出廷し、自分が仕様書案を作成したことを認めています)、原口室長は出来上がった仕様書案をNECに送付しチェックをさせていました。

そのメールのCc(参考送付先)に桑田さんが入っていたことが今回の公判で明らかになりました。平成23年12月に送信されたNECのセールスマネージャ尾崎さんから原口室長宛(Cc桑田さん宛)のメールには、仕様書案と詳細な見積書が添付されていたのです。

桑田さんは、ご自身もその見積書を確認したと言い、その内容は、

  • NECの常駐技術者の単金が100万円であり、その人数が9名と記載されていた
  • 保守対象機器1つ1つについての詳細な見積金額が記載されていた

であったとのこと。

さらに平成24年1月になって、原口室長から桑田さんにメールで「次年度のNCVCネットの予算について寒川研究所長のところに説明に行く必要がある」と連絡があり、原口室長から

NECの次年度の見積書では人数が1名多い

旨の発言があったといいます。そこで桑田さんはその真偽を確かめるべく、山口照太情報管理室長や中島雅人契約係長に尋ね、最終的には中島係長から

NECは現行と次年度は同じ人数でやるので、見積書を変更する必要はないと言っている。

との回答を得たとのこと。

その際に桑田さんはNECの現行(平成23年度)体制図を入手し、確かに9名の技術者が在席していることを確認しました。

しかし、うち1名はNCVCネットの運用保守業務には携わっておらず、実際には医療情報部で電子カルテの業務に携わっている人物が紛れ込んでいることに気付きました。

そこで桑田さんは、現状に即した正確な現行体制図を整備するようにNECに依頼していたのです。

その後、桑田さんは、ダンテックから現行運用体制について尋ねられ、ダンテックに正確な情報を提供すべきと考えて改めて正確な現行体制図の修正を求め、入札当日にようやく修正後の現行体制図を入手したと考えてダンテックに送ったとのこと。

以上のことから、桑田さんは、入札のかなり前の時点で、①現行も次年度もNECの技術者の人員には変更はなかった(そして新規参入を考える業者に提供するために正確な現状の体制図を必要としていた)こと、②次年度のNECの見積金額について、人員・機器すべてについて詳細な情報を入手していたことがわかります

他方、ダンテックは、入札の保守対象機器(ほぼすべてがNEC製)の見積依頼をNECに断られていた(NECセールスマネージャの尾崎氏の証言)ため、これらNEC機器の保守にかかる費用が予想できない状況でした。よって、NECが「いくらで入れてくるか」はもちろん、「自分たちがいくらでいれたらいいのか」すら、ダンテックにはわからないという困った状況であったと思われます。

ですから、もし桑田さんがNECに関する入札情報を漏らしてダンテックに便宜を図りたかったのであれば、体制図といった間接的な資料ではなく、すでに入手していたNECの詳細な見積書を提供したはずです。

そこにはNECの技術者の見積だけでなく、NEC機器の保守の見積金額も詳細に記載されていたのですから。

もちろん桑田さんはそのようなことをしませんでした。以上の事実から、桑田さんがダンテックに便宜を図るためNECの体制表を送ったのでないことは、明々白々であると思います。

メール送信アカウントにかかった疑惑

第22回公判の我妻弁護士の質問では、平成24年度入札の当日である3月19日の朝からの行動について、事細かに質問がありました。

病院に着いた時間、そこから何をしたのか?桑田さんは我妻弁護士の質問に、分単位で答えていました。

その内容は

  • 病院について内藤院長に面会のアポを取ろうと思ったこと
  • その前に前日自宅に届いたのに受け取れなかった郵便物について、職場で郵便局に再配達を依頼し、その受付確認のメールを受信したこと
  • そのメールは、個人的なことだったので病院のメールアドレスを使わずに、個人で契約していたメールアドレスを利用したこと

というものでした。

最初は「なぜそこまでのことを問われるのか?」「郵便の再配達が事件に何の関係があるのか?」と不思議に思いました。

その疑問は次のことで解かれました。

3月19日の朝、桑田さんが、問題となっているNECの業務体制表をスキャンしてダンテックの高橋社長にメール送信した際、個人のメールアドレスを使っていたのです。

検察はここに目をつけていました。

個人のメールアドレスで送ったのは、秘密裏にダンテックに機密情報を流したかったからだ

という見立てです。

しかし、桑田さんは

郵便局からの再配達のメールを個人のメールアドレスで受信した後に、高橋社長に頼まれていたH23年度の業務体制表を送信した。当時使っていたメールソフトでは、送信の際、直前に利用していたアカウントが発信者欄にセットされる仕様になっていた

と答えました。

桑田さんの「H23年度の体制表だと思った」ということに関しては、ご自身のブログをご覧になってください。

今回は第1回でしたが、次回は3月13日に2回目の被告人質問が行われます。

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弁護側からの質問の後は、検察側からの厳しい尋問も控えています。

どうぞ一人でも多くの方に関心を持っていただき、歪められた司法の力に立ち向かう桑田さんを一緒に応援していただけないでしょうか。

傍聴に来ていただけることはもちろんですが、ブログへのコメント、Facebookページへのコメントやメッセージも、非常に励まされます。

FacebookページとTwitterはこちらです。

国循サザン事件ー0.1%の真実ー(Facebookページ)

国循官製談合事件の冤罪被害者を支援する会(Twitter)

桑田さんを支援する会では、桑田さんの冤罪をはらすべく動いています。

公判を傍聴するたびに、0.1%を証明する真実が見えてきます。

ぜひご一緒に、その真実を確かめてください。

 

なお、次回期日は2017年2月28日(火)13時30分〜 大阪地裁603号法廷にて行われます。

ぜひ、真実をご自身の目で確かめにいらしてください。

*1:被告人質問とは、弁護側、検察側それぞれからの質問に答える形で被告人が法廷で供述をする場です。被告人の発する言葉すべてが証拠となります

*2:入札予定価格を算出するにあたって根拠となる資料